親ガチャが話題になったが、同じ親から生まれた兄弟間でも不公平は存在する。拓殖大学准教授の佐藤一磨さんは「日本では長男の学歴や年収が高くなる『長男プレミアム』が根強く、海外でも出生順プレミアムがあります。しかもそれは、本人だけでなくその子どもにまで影響します」という――。
リビングで遊ぶきょうだい三人
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親は長男をどれほど優遇するのか

筆者は仕事の合間に女性の悩みに関する記事を読むことがあるのですが、その中で「長男との結婚」についての記事を見かけることがあります。

「長男の夫は親の期待が大きい反面、さまざまな負担も大きく、しんどい」という流れの記事が多いのですが、気になるのが「長男への親の期待」という部分です。

「親が長男の将来に期待をかけ、さまざまな面で優遇し、教育面でも積極的に投資を行う」ということを意味するのだと思われるのですが、これは本当なのでしょうか。

今回は「長男が本当に優遇されてきたのか」という点を学歴や年収の視点から検証した研究について紹介したいと思います。

なお、結論を先取りすれば、日本では長男ほど学歴や年収が高くなる「長男プレミアム」が存在すると言えるでしょう。

以下で詳しく背景や分析結果を説明してきたいと思います。

儒教や旧民法の影響によって長男は優遇されてきた

日本、中国、韓国、台湾といった儒教の影響が強い東アジア諸国では、出生順位(何番目に生まれたのか)に大きな関心が寄せられてきました。これは、出生順位が親からの教育投資だけでなく、住む場所や仕事にも影響を及ぼすと考えられたためです。

また、東アジア地域では家庭内で女の子よりも男の子が重視される傾向があります。

これまでの日本の「イエ」制度では、一般的に長男のみに家業や財産を相続させる傾向が見られました。これが制度化されたのが第2次世界大戦前の旧民法であり、もし一家の主が亡くなった場合、原則として長男が遺産のすべてを相続するという制度が採用されていました。この場合、次男や長女等の長男以外の子は遺産を相続できませんでした。

この民法は第2次世界大戦後に改正されたのですが、長男を重視するという傾向は依然として農村部を中心に存続しているのではないかと指摘されています。もちろん、令和になった現在では長男重視の傾向はだいぶ弱まってきていると考えられますが、昭和や平成初期の生まれの方には生活の中で実感してきた部分があるのではないでしょうか。

以上の点を総合して考えると、男の子の中でも長男に大きな期待が寄せられたことは想像に難くありません。おそらく、教育面でも長男には手厚い投資がなされた可能性があります。これは所得にプラスの影響を及ぼすでしょう。ただし、長男には家の相続という責任も伴うため、家の周辺地域で働かなければならず、良い所得の仕事があったとしても移動制約のために就職できない恐れもあります。これは所得にマイナスの影響を及ぼすでしょう。

このように日本で長男として生まれることは、学歴や所得にプラスとマイナスの両方の影響を及ぼします。はたして、どちらの影響が強いのでしょうか。