200人もの行列が待っていること

集合まで少し時間があるので、「打ち子」についてネットで調べてみた。何も知らないままじゃ、さすがに不安だし。

パチスロの打ち子というのは、店によっては「軍団行為」として禁止されているようだ。バレると出禁の対象にもなるらしい。

集団で根こそぎ収益を出し続けると、最悪の場合、威力業務妨害として訴えられることもあるそうな。そんなの聞いてないんだけど……。

しかも、打ち子本人は当たりハズレに関係ないので、無類のパチスロ好きじゃなきゃできない仕事のようだ。

ああ、調べれば調べるほど、耐えられるか不安になってきた。大丈夫かなあ。

そんな不安をよそに時間は進み、時刻は9時20分。もう、集合時間だ。

店の前までやってくると、ビルを囲むようにスゴイ数の人が並んでいる。

すげえ、平日の朝だってのに、ざっと200人はいるぞ。その9割以上が男で、チャラついた格好の奴らが目立つ。これは場所柄だろうか。

手配師の彼からラインが来た。

「もう着きました? とりあえず、抽選を受け終わったら、コマ劇のファミマの近くにきてください!」

了解と返事をして、列に並ぶ。続けてラインが鳴った。

「抽選結果が50番以内だったらプラス500円払いますよ!」

マルハンのような大型のパチンコ屋は、早い者勝ちではなく、集合時間に来た客で抽選をし、整理券を受け取って入場するというシステムをとっている。そのため抽選を引くだけの、「引き子」というバイトもあるぐらいだ。

写真=iStock.com/tekinturkdogan
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初めて見たパチンコのシビアな現実

この店舗は9時30分が集合時間なので、それまでに集まった人の中から順番を決める。

パチ屋に朝一から並ぶのは初めての経験なのでちょっと緊張するぞ。

ソワソワしながら待っていると、店員が整理券を渡しにやって来た。この整理券で、並びの人数を確認し、その数字を分母にして抽選するわけだ。

俺が受け取ったのは207番。俺の後ろに並ぶ人数を含めたら、300人はいるかもしれない。

もうすぐ、集合時間の9時30分というところで最後尾から大きな声が聞こえてきた。

「もう間もなく締め切りまーす! 10、9、8、7……」

そう、パチ屋のスタッフが大声で呼びかけているのだ。そこに向かって複数の男がダッシュしている。

この時間に遅れたら抽選を受けれないので、彼らにとっては死活問題なのだろう。大人の男がダッシュしてるのは少し滑稽だ。

不幸にも少し遅れてしまったオッサンがいたようで、店員に懇願している。

「何秒か遅れただけじゃないですかぁ。お願いしますよぉ」

しかし、取り付くシマもない。

「残念ですが、あちらの一般入場列に並びなおしてください」

一般入場は抽選した客全員が入った後の、いわば、本当の最後尾だ。オッサンは肩を落としてその列に向かって行った。パチ屋ってこういうところはシビアなんだよな。