バブル崩壊後、銀行は融資したお金をどのように回収したのか。メガバンク現役行員の目黒冬弥さんは「泣いている妻の目の前で顧客を恫喝し、金目のモノを現金化させ、返済にあてさせた。強引な取り立てが繰り返されていた」という。実録ルポ『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)からお届けする――。
暗い部屋で話をする人
写真=iStock.com/Atstock Productions
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まったく歓迎されてなかった人事異動

さいたま新都心支店への異動。久しぶりの都会に心が躍った(さいたまだけど)。週末は妻と娘を連れて都会を案内しよう(さいたまだけど)。さいたま新都心支店は、外まわりを担う取引先課だけで6課、総勢60名以上になるマンモス店だった。

1~6課の役割を説明しよう。

取引先1課:上場企業、大企業、その地域で重要な取引先、看板会社を担当。
取引先2課:1課に準じる規模の中堅企業を担当。
取引先3課:新規開拓を担当。
取引先4課:個人取引を担当。
取引先5課:融資・外為・ローン事務を担当。
取引先6課:債権回収管理(融資したが途中で業績が思わしくなくなった会社の管理)

や、上記にカテゴライズされない取引先全般を担当する、いわゆるなんでも屋。私は3課に配属された。

取引のないお客を新規開拓する部署だった。宮崎中央支店での実績が買われたのだと気負っていた。宮崎中央支店では5名の外まわり担当で東京都より広い面積をカバーしていたのに、ここでの外まわり担当は10名もいる。青田支店長の言っていた「大きな支店」という言葉を実感した。

赴任当日、配属されたブースに行き、あいさつをする。

「宮崎中央支店からまいりました目黒と申します。よろしくお願いします」

誰もこちらを見ず、一心不乱に目の前のパソコンに向かいキーボードを叩き続けている。誰も彼もまったく関心を示さない。私は歓迎されていなかった。さいたま新都心支店に人員の不足はなく、青田支店長が無理に人事部に交渉した結果、ここにねじ込まれたのだった。