メガバンクでは以前、サービス残業が常態化していた。メガバンク現役行員の目黒冬弥さんは「上司から『残業した時間を正確に申告するように』という指示があった。気を使って過少申告したが、それは間違いだった」という。実録ルポ『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)からお届けする――。
オフィスのデスクで悲しむビジネスマン
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「遠慮はいらないから、思い切り暴れてくれ」

愛知県の豊橋駅前支店に着任初日、熱川支店長が握手を求めてきた。

「キミの人事資料、読ませてもらったよ。苦労したみたいだな。やり方はキミにまかせる。遠慮はいらないから、思い切り暴れてくれ。なんかあったら全部俺が責任を取る」

初対面でこんな言葉をかけてくれる上司は初めてだった。熱川支店長いわく、この支店では、法人営業は強いものの、個人向け業績が慢性的に苦戦しているという。そこで力を入れていたのが「投資信託」だった。

じつは投資信託は銀行にとって都合のいい商品でもある。

銀行が投資信託を販売すると、その投資信託を運営する投資顧問会社から販売手数料をもらえる。販売手数料は、販売額の0.5~3%程度で、高利回り(高リスク)の商品であれば、手数料も高くなる。リスクが高い商品ほど販売が難しいし、商品性が複雑だからだ。

お客が銀行にいくらたくさんお金を預けてくれても、銀行はお客に金利を支払わなくてはいけない。不景気だとお客の預金を貸出に運用できる企業も少ない。こうなると投資信託の販売手数料は銀行にとって安定した収入基盤となる。だから銀行はやっきになって、銀行預金を投資信託に移行させようと仕向けている。

しかし、そこには「元本割れ」というリスクもある。私は、担当先の社長の奥さんにターゲットを絞り、個人向け投資信託のセールスを開始した。