浅い呼吸が引き起こす体の不調

浅い呼吸は胸郭の形状にも悪影響を及ぼします。本来であれば、肩甲骨と肋骨は密着するように、それぞれが湾曲しているのですが、リブフレアになると胸郭の背面が平坦になるため、肩甲骨が肋骨から浮いた状態になってしまいます。

こうなると肩甲骨と肋骨が接する面積が小さくなり、肩関節の安定性と可動域が低下して、肩関節の障害リスクが高まります。

実際に、四十肩や五十肩を患っている人たちはリブフレアになっていて、頚部と肩関節の可動性が著しく制限されています。そういう場合は、肩甲骨の位置をリセットすることから治療を始めます。

そして、根本から改善するには、肋骨を下げて息を吐く習慣をつけて、リブフレアを修正することが必要になってきます(詳しいやり方は『痛みが消えていく身体の使い「型」』で紹介しています)。

一見すると、呼吸と関係なさそうな腰痛症や股関節の機能障害も、呼吸のしかたを最適化することによって改善できるケースが多々あるのです。

【呼吸と姿勢のつながり】

すぐに眠れるようになる呼吸法

リブフレアによってお腹が伸びてしまった状態を「アブシザース=abscissors」(「abdominal/腹部の」と「scissors/ハサミ」を合わせた造語)と呼びます。

この名称は、上半身を側面から見たときに骨盤と胸郭の前面がパカッと離れている様子が、ハサミを開いた状態に似ていることに由来しています。

リブフレアによってアブシザースになると、骨盤を下方から支える下腹部の腹筋や骨盤底筋群も緩んでしまうため、腹圧が下がるだけでなく、臓器を理想的な位置で保持できなくなります。

さらに、体幹(コア)の安定性が損なわれるため、ちょっとしたことでバランスを崩しやすくなります。

仰向けに寝たときに腰が痛む人の多くは、リブフレアが原因で腰が反って床から浮いた状態になっています。そのような状態ではリラックスして眠ることができず、朝起きたときに疲労感が残ってしまいます。

「仰向けだと腰が痛くて眠れない」という人は、寝る前に肋骨の下部を締めながら息を吐くようにしてみて下さい。リブフレアが修正されると、副交感神経が活性化して腰の反りと膝の曲がりが矯正されるだけでなく、入眠がスムーズになるといわれています。

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リブフレアを改善してアブシザースを治すには、上体を繰り返し起こす腹筋運動などを行っても効果はありません。上胸部を膨らませて息を吸っていたら、すぐにまた胸郭の出口が開いてしまうからです。

これらの問題は、筋トレよりも呼吸のしかたとパターンを修正することによって、効率的に解消することができます。