まったく新しい商品開発を

そんななかで18年、社内に立ち上がったのが、オープンイノベーション・プラットフォーム組織「ファンテック Lab&Biz(以下、ファンテック)」でした。

コンセプトは「N=1起点の商品開発」。「N=1」とは、お客さま一人ひとり(少数派)の声にも耳を傾け、それまで顕在化していなかった潜在ニーズを掘り当てて、まったく新しい商品開発に生かそう、といった考え方です。

従来、ニッチな声を救い上げるためには、消費者に対して「グループインタビュー」や「デプス(おもに1人に対して行う)インタビュー」を行う必要があった。筆者が経営するマーケティング会社も、以前はそこを強みにしていました。

ですが、いまやテクノロジーを駆使すれば、消費者が「買った」理由はもちろん、「買おうとしている」、あるいは「買わなかった」理由まである程度、分析、推測できる時代。

ファンテック設立の背景にも、外部企業と共にテクノロジーを活用することで、お客さまの潜在ニーズを拾おう、新たなワクワクを提案していこう、商品開発の仕組みを変えていこうとの思いがあったそうです。

1日だけの毛髪着色料

第1弾として、19年10月に発売されたのが、ワンデー用毛髪着色料の「パフ ワンデーヘアティント(PAF 1-day hair tint/以下、ヘアティント/限定発売終了)」。

写真提供=花王
「パフ ワンデーヘアティント」

ゆとり世代やZ世代を中心とした若年層をメインターゲットに、気分やシーンに応じて1日だけ、髪の毛に鮮やかなポイントカラーを加えられる商品です。

「夏の野外フェスやハロウィンの仮装、そして実は、20年に実施予定だった東京オリンピック・パラリンピックの応援時にも(日の丸カラーを髪に施してもらうなど)使ってもらえるかもしれない、と考えました」と寺田さん。