長時間労働が「頑張っている」シンボル

実際にどこまで異動するかどうかは個別性が高いものの、異動主導権が企業にある限り、「キャリアの先が見えない」という状況が長く続きます。専門性を磨きたいと思っても、2~3年後にはその職務についているかわからない状態では特定の職業への教育コストを投じる動機が生まれにくくなります。

また、社内昇進レースにおいては、「同期」という疑似共同体を作りながら切磋琢磨し、小さな昇進差を大きく捉えながらどんぐりの背比べを続けていきます。そこにおいてはオフィスに長く残り、長時間労働しているその姿が上司にとって部下の意欲や「頑張っている」ことのシンボルになっています。

出世以外のモチベーションが必要

ここまで言えば、もうおわかりでしょう。

小林祐児『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)

中高年の「働かない」問題は、こうした職業生活のスタートから規定され、中高年になるまでにその働き方を20年近く続けてきたことによる、「代替なきモチベーションの欠如」なのです。

「働かない」問題の核心は「モチベーションがない」ことではなく、「モチベーションのエンジンが組織内出世に偏ってきた」ことによる「代替物のなさ」のほうにあります。

窓際で暇そうにしている「個人の姿」や現在の「心理」の問題を遥かに超えたところにあるのが「働かない」問題の本質です。当然ながら、処方箋もまた、この深みに届くものでなければほとんど意味がありません。

「目に見えている景色」から離れられない心理還元主義的発想では太刀打ちできませんし、社内の中高年を「妖精さん」などと皮肉に眺めている若者も、この真因が変わらない限り、同じような道を歩むことになります。「働かないおじさん」問題の本当の問題点は、この人材マネジメントが変わらない限り繰り返されてしまう「組織内再生産」の構造にあるのです。

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