資格よりも大事なこと

ひとつの例をご紹介しましょう。ある企業でグローバル戦略に関わる戦略部門のマネジメント候補としてヘッドハントの依頼があり、次の2人が最終候補となりました。

写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです

Aさん:大手メーカーで経営企画部門に従事し、社内留学制度で米国MBAを取得。卒業後、日本の本社に帰任し、留学前の経営企画部門でグローバル事業統括セクションにてマネジャーとして海外法人の経営管理に従事。

Bさん:大手メーカーで事業部の現場を経験後、事業統括セクションに異動。その後、海外現地法人に出向し、現地会社の事業テコ入れに従事。そこで成果を上げ、別の海外現地法人の立ち上げを経験。その後、本社に帰任し、経営企画部門でグローバル事業統括セクションにてマネジャーとして海外法人の経営管理に従事。

Aさん、Bさんともに現在、日本本社の経営企画部門でグローバル事業の統括をされています。

ここでヘッドハント先の企業が「ぜひ採用したい」と選択されたのは、Bさんでした。

もちろんこうした職歴だけでなく、その人の人物(性格、人柄)や地頭などの要素も実際には絡んでいます。

ですが、概ね、同じような年齢と現在の職種・ポジションであった場合、MBAを取得したというよりも、実際に事業現場でどのような経験と実績を積んでいるかの方に、企業側の評価と期待値は重きが置かれます。

面接官が見るのは、その資格が仕事とどう関係するか

「どの資格を取れば転職に有利になりますか」

昔からいまに至るまで、特に不況期になると、転職ご相談者からよく質問されます。私の答えはいつも変わらず、「資格自体が転職に有利になることはありません」。

もちろん資格勉強を通じてその知識をつけることや、MBAなどで同窓となった人たちとのネットワーク・人脈が、その後にいきることはあり得ます。資格自体が役立つのではなく、その取得過程で得られたことのほうに価値があるのです。

履歴書に、これでもかと取得してきた資格を列挙される人がいます。

もちろんそれだけの資格を取得したこと自体はすごいのですが、それといまの仕事との関係はどうなのかに、採用側の目は行きます。

それが現職業務と関係ないものばかりだと、逆に「資格だけ持っていても実務経験がないじゃないか」「資格取得する時間があるなら、現職でしっかり成果を出していて欲しい」と見るのが、企業の人事や事業責任者、社長なのです。