「SVR将軍」は9月20日、父のパトルシェフ安保会議書記が中国を急遽訪れたのは、息子が大統領に就任した際の内外政策を説明するためだったと伝えた。中国側が「あなたの子息はウクライナ戦争をどう終わらせるつもりか」と尋ねると、父は「ドミトリーが大統領になる前に戦争は終了する」と答えたというが、これは信憑性に乏しい。
部外者から選ばれるのは「あり得ない」という見方も
野心家で執念深いプーチン大統領は続投するとの見方も根強い。政治評論家のアンドレイ・コレスニコフ氏は筆者らとのオンライン会見で、「プーチン体制は安定しており、国民を結集できている。プーチンはあくまで5選を目指し、ウクライナの戦争をやり遂げようとする。後継者の噂はあるが、指名することはない。周辺のエリートも反対すれば、命がないと恐れている。トップを交代させるルールもない」と指摘した。
政治学者のドミトリー・ジュラブレフ氏は「プーチンの側近以外が後継者になることはあり得ない。部外者が大統領になると、政権幹部を一掃して自分の仲間を連れてくるため、地位や利権が危うくなる」と指摘した。プーチン大統領が退陣する場合でも、「プーチンなきプーチン路線」が続くかもしれない。
アルコールで政権の規律が乱れている?
2024年問題の行方は、ウクライナの戦況も影響しそうだ。女性の政治専門家は匿名を条件にしたオンライン会見で、「今後は世代交代が重要。2024年に何が起きるか分からない。プーチンが力を持っていれば、続投するか、子飼いから後継者を選ぶが、ウクライナ戦争で敗北し、政権が弱体化すれば、まったく新しい人物が出てくる。まだ占い程度の段階だ」と述べていた。戦況が後継問題を左右するとの見立てだ。
政権に近いエリート層の間で、厭戦気分が広がっているとの情報もある。ラトビアに拠点を置く独立系メディア「メドゥーザ」は9月16日、政府幹部の間でストレス発散のため酒量が大幅に増えており、酒をほとんど飲まないプーチン大統領を悩ませていると報じた。
それによると、アルコール依存を強めているのは、閣僚や大統領府幹部、安保会議メンバー、国営企業トップ、知事らで、「一部の幹部は重要な行事を欠席するなど、規律が損なわれ始めた」という。
ロシアの歴史を動かすのは、庶民ではなく、昔も今も一握りのエリートだ。戦況が悪化し、国内政治・社会情勢が緊迫する中、エリート層がプーチン大統領を担ぎ続けるかも注目点だ。