コロナ禍で手帳の需要が顕在化

北米ではカリフォルニアなど西海岸のアジア系のコミュニティーを起点に、全米へと人気が広がってきたという。日本の文具情報を得やすい層から火がつき、クチコミでほぼ日手帳の良さが拡散されているというわけだ。

ユーザー層は8割が女性で、特に30〜40代が多く、「コロナ禍で自分自身の心と健康に目を向ける機運が高まり、手帳を活用する人が増えている」と西本さんは分析する。

「アメリカでは、マインドフルネスに注目が高まっていますが、手帳は日記を記したりその日の気分や体調を記録したりすることで、自分自身の主観を残せるのが大きな特徴です。パソコンでは客観的な記述しか残りませんが、ペンで自分のライフログを手帳に書き込むことが、自分を見つめる良い機会になっているのではと捉えています」

約1.7万人の「コミュニティ」が求心力に

一方で、「『どうやってほぼ日手帳を買うのか、公式ストアやAmazon・実店舗などがある中でどこで買うのがいいのか』といった疑問を、ユーザー同士で解決し合えるSNSコミュニティーの存在が大きい」と西本さんはコミュニティーの重要性について説く。

「ほぼ日の社員が介在しない、英語圏を中心に約1.7万人のユーザーが集まるクローズドのコミュニティーがあり、そこでは日々活発なやりとりがなされています。自然発生的に生まれたユーザーコミュニティーですが、熱量が高く、ほぼ日手帳に関する“あれこれ”が常に交わされていて、クチコミでほぼ日手帳の良さを広めてくれたり、賢い使い方を共有したりしています」

ユーザー自らがほぼ日手帳の使い方を積極的に広げてくれるため、「私たち自身も、ほぼ日手帳の価値について、お客さまから教わることが多い」と鈴木さんは付け加える。

「ほぼ日手帳はある種、マウントを取り合うブランドではないと思っています。仮に同じほぼ日手帳を使うユーザーを見つけても、『手帳が被った』とは思わず、むしろ互いにその手帳の良さを知っている『仲間意識』の方が強い。これこそがほぼ日手帳のブランディングにつながっていて、こうしたベースがあることで良質なコミュニティーが形成され、ユーザー同士が自発的に働きかけ合う土壌ができていると考えています」

写真提供=ほぼ日
9月1日発売の2023年版のほぼ日手帳は、ラインナップは100種類以上、本体も19種類に増えて、さらに充実。