1社目の会社では定期的に上司との面談がありました。評価のための面談でしたが、その時に営業活動の悩みなども相談できていました。

ただ、「1社目では成果を出しているという自負があったので、むしろ1人の上司による評価だけで昇給やボーナスが決まることに不満を感じていた」とAさん。それが転職を考えた理由の1つで、だからこそ歩合給のある会社に魅力を感じたそうです。

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給与を決める評価基準を把握したほうがいい

Aさんのように歩合給を導入している会社に転職したものの成果を出せず、収入アップできなかったという例は珍しくありません。特にベンチャー企業やスタートアップをはじめ、中小企業の営業職によくあるケースです。

営業社員が自分を評価してくれる会社に転職したいと考えるのは悪いことではありません。問題は給与を決めるための評価の判断基準が「営業結果の数字だけ」だったことにあります。

それではスランプになったり、業界の環境が変化したりすると、あっという間に収入がダウンしてしまいます。

これは社員だけでなく、実は会社側にとってもリスクがあります。結果を出せない社員は次々と辞めてしまい、また新しい人材を採用する、というくり返しになり、人材が育たず会社が成長できないからです。

では、社員の評価方法として何が必要なのか。それは「経営計画」と「人事評価制度」です。「経営理念」がある会社は多いですが、その理念をいつまでに、どう実現していくのかを示した「経営計画」まで策定できている所は、中小企業では特に少ないです。

また、「人事評価制度」を社員の仕事ぶりを評価し、給与額を決めるためのものだと誤解している経営者も多いですが、「会社の理念実現に向けて、目標を達成できる人材づくり」が本来の目的となります。

そのためには「経営計画」と連動し、会社全体の目標に向けて個人が何をすべきか、成長のための課題は何かを示した評価基準を作成し、人材育成のための評価を行うことが重要です。

従業員100人未満の会社は特に要注意

ところが、経営計画と人事評価制度をうまく運用できていない会社が非常に多いというのが、この20年間、600社以上を直接指導してきた私の実感です。それどころか従業員100人未満の会社のほとんどには経営計画も人事評価制度もありません。

実はこのクライアントX社も、以前は歩合給メインで社員が定着せず、弊社に相談をいただいて改革をしてきた会社でした。

他にも歩合給の会社を渡り歩いてきた社員が、最終的に経営計画と人事評価制度を運用している会社に定着したというケースも見てきました。

経営計画と人事評価制度を策定し、運用していくことのメリットは大きく分けて3つあります。1つ目は経営計画で会社のビジョンが示されていることによって、社員一人ひとりが何を目指し、どんな役割を担うべきかがはっきりすること。