ワクチン接種で3回発熱して痛感したこと

巷ではよく「疫病との戦い」「コロナに打ち勝つ」といった表現で、勝つ負けるの論理で語られがちですが、私は当初からそんな形容に違和感を覚えていました。生物全体を俯瞰ふかんして見れば、人間がウイルスに優先されるわけではないからです。

ヤマザキマリ『歩きながら考える』(中公新書ラクレ)

「自分たちこそ特別だ。自分たちは相手より優れているし正当なので、相手はこちらの価値観を共有すべきだ」という主張が戦争の誘因となるわけですが、ウイルスに対して戦争を仕掛けて勝つことなどできないでしょう。人間もウイルス同様に生き残りを目的とするのであれば、「共生」の認識こそ、私たちに求められるのだと強く感じています。

私はワクチンの接種で3回とも発熱し、数日寝込むという経験をしました。人間の歴史はこうした疫病と共にあるものだということは、歴史の書物を通じて頭では理解していました。それを今回、まさに自分の体を張って体感することができた気がします。そして発熱するなかで、勝つ負けるの問題ではないことも実直に痛感しました。

写真=iStock.com/kazuma seki
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勝ち負けの感情がやる気を生む場合もあることは認めます。スポーツというのはまさにそうした人間の精神を反映した文化でしょう。しかし、パンデミックには当てはまりません。勝敗や優劣といったスタンダードから自由になったほうがいい。そのためには、同じ地球に共生している人間とは異質の生き物、例えば昆虫などの生きる様を見るだけでも意義があるかと思います。

私のようにカブトムシを50匹羽化させなくても大丈夫ですから(笑)、自分たち人間も彼らと同じ大気圏のなかで発生した生物であり、自覚はなくても実は地球と連動する本能に従って生きているということを感じてみてください。

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