青年期に活動した元信者ですらこうなのだから、中高年の人達の困難さは相当なものだ。

もっと言えば、被害を受けた人達の記憶ですらこのように曖昧になっているのだから、加害の側にあって霊能師の役割を演じて何十人、何百人相手に因縁の話を説いてきた旧統一教会信徒の記憶も実に曖昧なものである。パターン化されると個別の出来事に対する記憶がぼやけ、そこで味わった感情の動きに鈍感になるのである。

「違法な献金」警察はなぜ見逃しているのか

見方を変えれば、このような裁判は教団にとって実に有利である。

櫻井義秀『霊と金』(新潮新書)

教団は、加害側・被害側双方の信者にも記録を残させない。どちらの証言にも曖昧性が残る。

旧統一教会は仮に損害賠償を求める裁判を起こされても、証拠不十分で返還が認められない分が相当出てくるのであるから、慰謝料を払っても取り得である。

しかも、旧統一教会による違法な献金強要訴訟に典型的であるが、個々の判例では教団による組織的献金要請のシステムや勧誘者のマニュアルまであることが確認されている。

にもかかわらず、組織本体に対する警察の取り締まりがない。

訴えられて負けたときだけ賠償金を支払えばいいということになれば、泣き寝入りする被害者も少なくないのだから、違法であっても儲かる商売となる。そのことを分かってやっているのが、旧統一教会とはいえないか。

どうして、このような理不尽なことが許されているのかと、読者は怪訝に思われるだろうし、被害者は憤怒に堪えないだろう。

ここには、法の支配だけでは解決できない問題がある。

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