マインド・コントロール下でも「信者が自発的に献金した」

被告である旧統一教会は、原告が商品の購入や献金を信者として自発的に行ったと主張し、原告と関わりがあった現役の信者にその旨証言させた。

原告側の弁護士は、原告女性が、旧統一教会員の巧みな勧誘にのせられて信者にさせられ、金を出させられたと主張した。

判決では、旧統一教会側の勧誘行為には違法性があり、初期の商品購入や献金は強いられたものであると認定し、この女性が旧統一教会を辞める直前の献金行為にも強制を認めた。

しかし、12年近くの信者生活の中間で買った品物や献金は、信者として自発的に行ったものだとみなされたのである。

賠償が認められなかった半分の2億数千万円が該当する。

原告を、違法な勧誘により畏怖困惑させて信者にしたのは許し難いとする一方で、どのような経緯であれ、信者となって進んで献金したものに違法性はない、という裁判所の判断は、素人目にも矛盾している。

つまり、入信前に、先祖がうかばれない、霊のたたりなどの心理的圧力を受けて原告が入信したことを、裁判所は事実と認定した。

だから、入信前後の物品購入・献金は違法な勧誘と教え込みの結果、自らの意志に反してお金を出させられたものと判断したのである。

裁判所が認めた「違法な心理的圧力」

ところが、信者となってから12年余り、原告は教団から過度な献金要請を受けずとも、請われるままに献金した。

少なくとも激しく抵抗した経緯が認められないので、これらの献金は自由意志による宗教行為と裁判所は考えたのである。

しかし、これでよいのだろうか。

いったん信者になれば信じ切っているのだから、抵抗するわけがない。おかしいな、変だぞと思い、こんな金は出せないと抵抗したら、その時点で教団を辞めている。

原告は教団を辞める直前にそのような心境になり、献金要請に抵抗を示し、ついにおかしさに気づき脱会したのである。

裁判所は原告が教団に疑念をいだいた経緯を認め、この間の献金は違法な心理的圧力によるものだと断じた。