LCCが羽田神話を打ち破り、10年で急成長を遂げた理由は、収益の基盤となる国内幹線以外に独自の観光路線を開設していったことが挙げられる。

例えばピーチ。成田、関西空港などから新石垣空港路線を4つ持っている。市の統計「観光入域客数」によると、観光客数は2012年の71万人(うち空路利用は65万人)から、2019年には147万人(同111万人)の70%増となった。

受け入れた石垣市観光文化課長の玻座真保幸はざまやすゆきさんは、「市にとって観光産業は総合産業としてリーディング産業であり、観光消費は1次産業の青果農業、2次産業の特産品製造などへの波及効果も大きいですし、日常の延長として普段着で来られる旅行者が増え、石垣が身近になったことは喜ばしいです。直行便は石垣島を沖縄本島レベルの経済に引き上げてくれる存在です」と言う。

安さが生み出す好循環

対してジェットスターも独自の観光路線の開設に熱心だ。2019年3月、みやこ下地島空港の民間空港としての開業と同時に成田空港から就航した。みやこ下地島空港は、宮古島の宮古空港から20kmしか離れていない。これほど近い場所に2000mを超える2本の滑走路をもつ空港は国内では他に例をみない。

宮古島市の空港を管轄する沖縄県空港課の笹原謙徳ささはらけんとくさんは「両空港において特色を生かしながら就航エアラインが増設されることは、特に観光需要を促し、市の発展、経済振興の面からとても喜ばしいことです。那覇を経由地とせずに大都市と直行便で結ばれ、人流、物流、時間や価格の面にも非常にメリットが大きい。急進するアジアの経済を見据えて国際的な拠点となるよう望んでいます」と話す。

筆者撮影
ピーチの新しい商品「開運旅くじ」を紹介する客室乗務員

コロナ禍にあってみやこ下地島空港は、他のどこの空港にもない旅客数を迎え入れた。2019年の開港以降で、2020年度はコロナ禍でも-9%にしかならず、2021年度は対前年比で+93%の数字を記録することができた。開港3年目の2021年度ではみやこ下地島空港の乗降客数は宮古空港の25%にあたる22万2000人あった。

両空港関係者への聞き取りで、LCCの就航が受け入れた側の地域経済に大きなメリットをもたらすことがわかる。安価な運賃がさらなる旅行需要を生み出している。

日本のLCCは「伸び代」しかない

日本のLCCはこれからも成長を続けることができるのだろうか。

2021年4月にインターネット調査機関「マイボイスコム」で行われた第4回LCC利用者調査によると、再利用意向調査では、是非利用したい(9.9%)数値は過去最高値となり、まあ利用したい(22.6%)を合わせ合計32.5%となった。どちらともいえない層(37.9%)も多く、日本のLCCは10年で急成長を遂げたとはいえ、まだまだ伸び代があると言える。

筆者撮影
ジェットスターのエアバスA320