新聞通信調査会の調査によると、メディアとしてもっとも肝心なニュース接触率で、「新聞」は19年度に「ネット」に抜かれ、21年度は61%にとどまり73%の「ネット」の後塵を拝するようになった。
情報の信頼度も、21年度をみると、「新聞」が67.7点(20年度69.2点)で、69.0点のNHKにトップの座を譲った。
経営面でも、「新聞」の総発行部数は、00年に約5400万部を数えていたが、20年余の間に約3300万部にまで落ち込み、さらに加速度的に減少している。00年に約1兆2500億円あった新聞広告費も、20年には約3600億円に激減した。
「新聞」に接する機会が減れば、社会への影響力が落ちることは自明の理である。
「テレビ離れ」に頭を抱えるNHKと民放
一方、放送界も、急加速する「テレビ離れ」に頭を抱えている。「ネット」の進展による影響であることは言うまでもない。
NHK放送文化研究所が5年に1度実施する「国民生活時間調査」の2020年版によれば、1日(平日)にテレビを見る人は79%で、15年の85%から大きく減り、8割を割り込んだ。とくに10歳代後半の落ち込みが大きく、47%と5割を切った。15年に比べ24ポイントも激減したのだ。20歳代も51%で、18ポイントも減った。
これに対し、「ネット」の利用は、それぞれ80%、73%を記録。若年層を中心に、「放送」から「ネット」への移行が顕著に表れた。
「テレビ離れ」は、受信料の減収につながりかねないNHKよりも、広告費に頼る民放界を直撃する。
民放界の広告費は、かつては2兆円を超えていたが、19年に「ネット」に抜かれ、20年には1兆7000億円を割った。視聴率が広告費のものさしになるだけに、視聴者が減れば収入減に直結してしまう。
18年春には、政府の規制改革推進会議が「放送」の改革について論議する中で「民放不要論」まで飛び出し、民放界を震撼させた。
「放送」の低落トレンドは、「新聞」ほどではないにせよ、今後も続くとみられる。
こうした傾向にいち早く危機感を覚え、20年余にわたって「デジタル時代の放送」を探ってきたのがNHKといえる。
成功体験にとらわれ、青写真を描けなかった
イギリスのBBCのように海外をみれば、「放送」が「ネット」に本格的に進出する事態は避けられないだろう。
民放界の代弁者でもある新聞界は、20年余の間に「デジタル時代の放送」や「NHKのネット事業の在り方」の青写真を描くチャンスが何度もあったに違いない。