「NHKのネット配信」で苦境に立つ新聞・民放

NHKのネット事業が「放送の補完」から「放送と並ぶ本来業務」に格上げされる方向で動き出した。

総務省の有識者会議が8月初めに公表した「放送」の将来像について取りまとめた報告書で、初めて制度面の検討を進める方針が示され、今秋から具体的な検討に入ることになった。自民党も相前後して、「本来業務」に向けた検討を始めるよう提言、歩調を合わせたのである。

これにより、NHKがかねて熱望していた「ネットの本来業務化」に向けた議論が本格化する運びとなった。

スマートフォンで映画を視聴する女性
写真=iStock.com/oatawa
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「公共放送」として放送界をリードしてきたNHKが、「放送メディア+ネットメディア」として法的に位置づけられ、名実ともに「公共メディア」に脱皮することになれば、メディア界の勢力図は大きく変わりかねない。

こうした動きに対し、民放界に大きな影響力をもつ新聞界は、あいも変わらず「NHK肥大化」「民業圧迫」と批判するばかり。NHKのネット事業をめぐる新聞界の主張は、20年以上もの間、いっこうに深化していない。自ら「デジタル時代の放送」の具体的な絵図を描いて「NHKのあるべき姿」を提言することだってできたはずなのに、行政まかせの姿勢に終始してきた。

「ネット」の浸透でメディア事情が激変して、新聞界は苦境に立たされている。ネット事業に注力しているNHKを前に、なすすべもなく佇んでいるようでは、かつての「メディアの盟主」はネット時代に本当に置き去りにされてしまう。

国は「放送」と「ネット」の両立を視野に入れる

総務省の有識者会議「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」(座長=三友仁志・早大大学院教授)が2021年秋から進めてきた「放送」の将来像をめぐる議論は、「放送」が「ネット」とどのように関わっていくかが最大のテーマになった。