新たな情報空間で、新聞界がNHKや民放と共存し、「ネット」と折り合いをつけるためには、どのような形が望ましいのか、それを実現するためにどのような方策があるのか、そして、どのように筋道をつけたらいいのか……。自ら知恵を絞り、有識者を集めて意見を聞き、現実的な将来図を描いて、政府に実現を迫ることができたはずだ。だが、そうした動きは一度もなかった。
新聞界は、いまだに「ネット」との適切な付き合い方を見いだせず、もがいている。過去の成功体験にとらわれ、ズルズルと後ずさりするさまは、なんともふがいない。自らの生き残りに懸命で、NHKのネット事業の拡大に目配りする余裕はなかったようだ。
それだけに、総務省が次々に示すNHKのネット事業の拡大図に、同じような批判を繰り返し、同じような注文をつけるだけの受け身の対応にならざるを得なくなってしまったのが実情だろう。
そこに、新聞界の限界がかいまみえる。
ネット時代に存在感を示せるのか
不作為のツケは、「公共メディア」の確立という大きな荒波となって打ち返してくることを覚悟しなければならない。
いったん固まった行政の方針を覆すことは容易ではないが、NHKが「公共メディア」に変貌する具体像の議論は、これから始まる。新聞界が設計図を示して議論をリードするタイミングとしては、決して遅すぎるわけではない。
放送界が本格的に「ネット」に乗り出そうとする歴史的な転換点を迎えている中、メディア界のリーダーを自認する新聞界は、存在意義を示す踏ん張りどころだろう。