もちろん理想を言えば、薬への不満をしっかりと受け止めてくれる医者と出会うことです。「調子悪くなります」と訴えたときに、「少し減らしてみましょう」と臨機応変に対応してくれるかかりつけ医を見つけることでしょう。
いちばんいいのは、話しやすくて会うと気持ちが楽になる医者、つまり相性のいい医者を探すことです。我慢してまで気に入らない医者と付き合う必要はありません。
そのためにも、薬を飲んで不調になるときにはそのことをはっきりと医者に申し出てください。そこがスタートです。
高齢者が薬で「正常値」にする副作用
ほとんどの薬は血圧、血糖値、コレステロール値などの数値を下げるためのものです。
では、そういう数値を下げれば老いても元気に暮らしていけるのでしょうか。そもそもなぜ数値を下げようとするのかといえば、正常値とされる数値より高いからです。平均値を挟んで大半の人を正常とし、高過ぎたり低過ぎたりする人を異常とする統計的なものです。
でも人それぞれの体質や環境があります。少しぐらい高めでも毎日元気で、自分でも体調がいいと感じている人もいれば、正常値でも病気になったり不調を感じる人もいます。
たしかに脳梗塞や心筋梗塞のような病気の予防には、先に挙げた3つの項目の数値は高いより正常であったほうがいいでしょう。
でも薬を使ってまで下げる必要があるのかどうか、とくに高齢者の場合は疑問です。
私にも経験があるのですが、血圧や血糖値を薬で下げるとボーッとしたりだるくなったりすることがあります。コレステロール値を下げる薬は男性ホルモンを抑えますから活力のないしょぼくれた老人になってしまいます。コレステロールは免疫細胞の材料でもありますから免疫機能も低下します。
血圧や血糖値、コレステロール値はちょっと高いぐらいがいい
それだけではありません。薬だけでなく食事にもつい気を遣うようになります。しょっぱいものとか味の濃いものを避け、肉料理のような脂っこいものも避けてしまいます。何だか食べる楽しみが薄れてしまいます。
その結果、数値がどんなに正常に近づいてもこれといって楽しみもなく、しかもボーッとしたり元気の出ない生活を送ることになってしまいます。これでは老いがどんどん加速されるでしょう。ただ数値を下げるためだけに薬を飲んでも、QOL(生活の質)までが下がってしまったら意味がありません。
むしろ血圧や血糖値、コレステロール値はちょっと高めぐらいのほうが高齢者の活力を維持してくれます。本人がそれで元気なら何も問題はないというのが私の考えです。