「あの動画はまさに私のこと!」

動画の中では、そのような状況の中、わかり合えない親と娘を取り上げて、最後は娘が自信に満ち溢れたポートレート写真とともに自分の思いを告げる様子が描かれます。

女性たちが自分らしい生き方を選ぶ姿勢と、自信に満ちた姿は、多くの女性の共感を獲得しました。私も、一般の消費者へのインタビューで「あの動画はまさに私のこと! すぐに自分の親にも見せた。私は今後もSK-IIを使い続けると思う」と泣きながら語る女性にお会いしたことがあります。

この動画が素晴らしいと思うのは、結婚や家族に関する伝統的な価値観と、そこで思い悩む人に目をつけた現地への理解度はさることながら、子どもと親がわかり合うシーンを示しているところです。

中国は家族を重んじる文化が非常に強く、若い世代でも「親がわかってくれなくても自分を貫く」というよりは、「自分を貫きたいけど、親にもわかってほしい」という気持ちが強くあります。だからこそ、若い世代の女性たちの悩みは深いものがあるのです。

このプロモーションは、文化や伝統を深く理解し、それにまつわる人々の気持ちにスポットを当てることで、キャンペーンのテーマである「Change Destiny」を上手く中国市場の文脈に当てはめた好例と言えるでしょう。

中国と日本ではカレーライスの作り方も違う

ここまで、価値観に寄った抽象的な事例が多くなってしまいましたが、日々の生活習慣にも違いはたくさんあります。

例えば食文化は、各国の違いが色濃く表れる領域です。国ごとに食べるものが違えば、味覚も異なります。皆さんの普段の生活でも、多様な食文化に触れる機会は多いと思います。

中国で暮らす中で目についた例を紹介します。図版2はハウス食品のバーモントカレー(中国では百梦多咖喱)のパッケージの裏面です。

図版2:中国と日本のバーモンドカレーのパッケージ裏面(2022年時点)(出所=ハウス食品のサイト「HOUSEヒント」、『ブランドカルチャライズ』)

よく見ると、日本だと煮込み鍋を使って調理していますが、中国だとフライパンのようなもので調理する図になっていることが見て取れます。中国の家庭では、実際多くの料理を中華鍋で行うのですが、そういった習慣に合わせていると思われます。