本当の幸せ

「余談ですが、私は病気の治療と並行しながら、抵抗のあったお水の世界に足を踏み入れてまでして何とか奨学金を返済したのに、兄は母に一括で返済してもらったということを最近知りました。母から兄妹差別をいろいろ受けましたが、自分が苦労して乗り越えたものを、兄は当然のようにポンと助けてもらえるのだと腹が立ちましたし、正直こたえました。でも、病気をして実家に戻った約2年間は、母や祖父母たちと家族のやり直しができた大切な時間だったとも思っています」

とはいえ、これまで受けた兄との差別について、今後も母親に問いただす気はないという黒島さん。

「差別をしてきた母本人や、優遇された兄よりも、自力で幸せをつかんだ私のほうがずっとよい人生を送れていると思うので、これからも問いただす必要はないと思っています。ただ、70歳すぎの高齢者になった母が今後するであろう終活や私たち子供への相続に際して再び差別がなされたら、2人(母と兄)とは完全に縁を切るつもりです。その時には、判断にいたった長年にわたる因縁の経緯を話してしまうかもしれません」

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現在のところ、祖父母の遺産は母親に入っている。黒島さんは、「葬式代だけ遺して後は自分のために使って」と母親に言っているが、兄は相変わらず、「実家と土地を(長男である自分に)寄こせ!」と息巻いている。

「最近の母は自分の行動や考えを改めようと努力しているのが見てとれますが、兄は思いやりや責任感というものがまるで感じられず、本当に恥ずかしいです。兄を見ていて思うのは、親が甘やかして育てると『家と家族を守らねば』という自覚も、『家族と協力しよう』という優しい気持ちも芽生えず、お金と愛を混同して、底なしに貪(むさぼ)る“モンスター”になるだけだということです。私は歪な家庭で育ったけれど、人生の最後を笑って迎えられそうな予感がします。母や兄もそうあってほしいなと思っています」

短絡的に思考し、母親から逃げ回っているだけの兄ではなく、家庭のタブーの本質にいち早く気づき、いち早く逃れた黒島さんが、今、最も幸せの近くにいる。

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