企業理念を浸透させるために、価値観や行動基準をさらに社員の行動すべき内容として明文化し、全世界の4万5000人の社員の人事評価の一部に加えることも予定している。
グローバルリーダー養成も前述した研修と連動した仕組みを構築しつつある。具体的には、当初は幹部社員層の200人程度をグローバルリーダー候補として位置づけ、主要ポストへの登用を前提にした育成計画を作成。研修と配置による育成を行うというものだ。
後継人材の選抜と育成を活性化する新しい仕組み
後継人材の選抜と育成計画の指標となるのが導入予定の新しいタレントマネジメントシステムだ。これは、各部門単位の人材育成会議、事業部ごとの事業審議会、本社の人材審議会で議論する人材の適正配置のベースとなるものだ。グローバルリーダー候補の中で業績が高く、ポテンシャルの高い人を特定すれば、後継人材としてノミネートされる。
「たとえばその人を執行役員にすると決めたならば、スキルギャップをどのようにして埋めるかという育成計画をつくります。もちろん研修も大事ですが、別の事業部に異動させたり、あるいは海外での経験を積ませるという配置を繰り返すことで執行役員に育成していくことになります」(大月部長)
このシステムがいよいよ今年の4月から試行される。仮にこの仕組みが順調に機能するようになり、「外国人の社員が後継人材としてふさわしいということになれば、異動による育成を経て役員に登用されることもある」(大月部長)ことになる。
グローバルリーダー候補にノミネートされた社員は、当然育成計画に基づいて日本を含む世界の拠点を異動する。しかし、国ごとに賃金体系や人事評価制度が違っていてはスムーズな異動に支障を来すことになる。そのために日本の管理職と現地法人の幹部社員の人事制度を統一することにしている。
同社の現在の管理職の資格等級は、年功的な色彩が残る日本的な仕組みで運用しているが、「社員を世界レベルで適時・適材・適所に動かそうとすれば、世界共通の仕組みを導入する必要がある。今後は管理職以上は職務や職責など、仕事の役割に基づく役割等級制度を導入していく」(大月部長)予定だ。