これに対し、日本における働きがいとはどのようなものか。これまでの日本の雇用モデルの強みの源泉は長期性にあり、「今」ではなく、未来への期待を原動力に働きがいを感じてきたと私は考える。今の仕事はつらく苦しいが、将来きっと何かにつながるかもしれないという「成長可能性」や、今の仕事には達成感を感じないが、いつか達成感を感じられる仕事に就きたいという「達成感獲得への期待」が、現在の働きがいと結びついているところがあった。
その背景には、日本が長年にわたって長期雇用を続けてきた伝統もあるだろうし、働く人も長期的な雇用を求める傾向が強かったという事情もある。いうなれば日本人のキャリア観のなかに未来志向を含んでいる部分があり、長期的な時間軸を考慮した視点が働きがいを考えるうえで非常に重要なポイントであった。
もちろんアメリカ人にもキャリアプランはある。しかし、それは会社に長期的にコミットするのではなく、自ら描くキャリアプランの実現に有利な会社とはどこかを比較しながら、会社を移動することでキャリアを築こうという傾向が強い。
したがって働きがいについても、今、フェアに取り扱われているのか、自分の評価、処遇、ポストが公正なものであるかが重要なポイントになる。外資系で働いている日本人もそうした意識が強い。
一方、日本の場合は、長期で人と組織との取引関係が成立しており、現在のフェアネスはそれほど重要ではなく、将来へ向けて何をしてくれるのかという点がより重要だった。
※すべて雑誌掲載当時