医療機関と連携するのが難しい事例も

まずこれは患者本人の条件ですが、病前性格の良し悪しは大きな要因で、たとえばもともと怒りっぽい方は認知症になると、さらに怒りっぽくなることが多いです。逆に穏やかな性格の方は病気の種類にもよりますが、ニコニコしながら穏やかに呆けていく印象が強いです。

もともと社交的な方は認知症になってからもデイサービスにつながりやすいですが、人付き合いが苦手な方は交流の場に行くのを拒否することが多いので、デイサービスなどに連れて行くのが難しいです。そういう方でもいったん連れて行ってしまえば、うまく適応できることのほうが多いのですが、連れ出すことは容易ではありません。

もう一つは家族の条件で、ケアスタッフなどが関わるのを拒否することに関する二つのタイプがあります。まず責任感から自分だけで抱え込み、疲弊していくタイプです。そういう人はいろいろと相談はされるのですが、デイサービスへの参加やケアスタッフの関わりを受け入れられないのです。世話を焼くのが好きな女性に多いタイプで、患者と介護者が共依存になっているとも言えます。

このケースでは相談の時間ばかりが長引き、堂々巡りになりますので、相談を担当する側も少なからず疲弊します。

「3密」になるような交流が連帯感をつくっていた

もう一つは第三者の関わりの必要性を説明しても理解できず、他人に関わってほしくないと頑なに拒否するタイプです。これはプライドが高く頑固な男性に多くみられます。前者、後者ともに結果的にDVにつながるリスクが高いため注意が必要です。

飯塚友道『認知症パンデミック』(ちくま新書)

このような困難事例はケアに関わる誰もが悩むケースなので、事業所間の情報の共有がどうしても必要になりますが、コロナ禍当初は事業所間をつなぐオンライン環境が各事業所で一律に普及しませんでしたので、少人数で集まって広い会議室で会議を開きました。それから数カ月後、オンラインシステムが各事業所で整いましたので、WEB会議が開催できるようになり、情報交換はだいぶスムーズになりました。

ただ、こういった会議が成立するには、長年一緒に活動してきた仲間意識が前提となります。コロナ禍以前は会議、研修会、認知症カフェ、市民公開講座など頻繁にイベントが開催され、だいたい月に1回は顔を合わせていました。

ときには懇親会など食事をともにしながらざっくばらんに本音で熱い思いを語る機会もあり、それがチームワークのベースとなりました。こういった状況は思い返せば「3密」ということになるのですが、それが連帯感をつくっていたことは間違いありません。

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