80代と50代の親子が、なにかしらの理由により生活が継続できなくなる「80–50問題」が深刻化している。複十字病院認知症疾患医療センター長の飯塚友道さんは「コロナ禍の不況で仕事に就けない中高年者が増えているため、状況はさらに深刻化している」という――。(第1回)

※本稿は、飯塚友道『認知症パンデミック』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

救急車の中の患者
写真=iStock.com/SetsukoN
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コロナ禍によって深刻化した“80–50問題”

近年、社会問題としてメディアで取り上げられるようになったのが「80–50問題」です。これは80代の親が自宅にひきこもる50代の子どもの生活を支えていたのが、病気など何らかの理由により経済的・精神的に行き詰まり、生活が継続できなくなる状態のことを指します。

80代にもなれば加齢のため、支援する側からされる側に回ることが多くなります。行政の支援が行き届かないまま親が要介護状態、あるいは亡くなってしまうことで50代の子どもの生活が急に成り立たなくなり、最悪の場合、子どもの孤立死や親が子どもを道連れにする無理心中が発生します。

さらには親が亡くなって途方に暮れ、遺体をそのまま放置して死体遺棄で逮捕されるケースもあります。内閣府が2019年に発表した調査結果によれば、40~64歳のいわゆる「ひきこもり中高年者」の推計は61万人以上にのぼります。今はまだ問題が顕在化していなくても、親に万一のことがあれば多くの80–50世帯が危機的状況に陥ってしまうでしょう。

その80–50問題をより深刻にしているのがコロナ禍の影響です。