送風冷感機があまり売れなかった最大の要因
そこで、2013年に販売したのが首元を冷やす送風冷感機「USB首ひんやりネッククーラー」(1980円)でした。本商品を首に装着すると、内側の金属製クーリングプレートが首に直接触れるようになっています。そのプレートに内部からファンの風を当てることで熱を奪う、という仕組みです。USB電源の他、乾電池でも動作するうえ、本体内部にはスポンジが装備されていて、水をしみこませることで冷却効果をアップさせる機能もありました。
これまでにない、斬新なアイデア商品だったのですが、販売はふるいませんでした。なぜ人気が出ないのかと、お客様の声を調べていったら、冷却能力が高くなかったことがいちばんの要因でした。猛暑になると、涼しいと思えるほどにはプレートが冷えなかったのです。
その経験があったので、徹底的に冷やして涼しくなるソリューション(解決策)がないか、と考えていたのです。そのときに知ったのが、「ペルチェ」という半導体素子の存在で、これは通電すると片面が熱く、もう片面が冷たくなる性質があり、小型の冷蔵庫などに使われていたデバイスでした。これを見つけたとき、小型化してUSB電源で駆動すれば、どんなに暑くなっても冷えるウェアラブル(身に着ける)な商品ができるぞと思いました。
新しいアイデアを商品化していく難しさ
社内の誰が、このアイデアを考え出したのかは、忘れてしまいました。そんなことは忘れてしまう程度のことなのです。大切なのはアイデアを商品化していく会社全体のパフォーマンスです。この場合の商品化とは、実際に作るだけではなく、コストから利益まで計算し、市場調査などのマーケティングをやって、宣伝PR戦略をたてて、売り出すところまでを言います。
とはいえ口で言ったり企画書に書くのは簡単でも、現実に計画通り商品化するのはとても難しいものです。
最初に考えたアイデアは、冷えるプレートが1つで、首の後ろとかオデコを1箇所だけ冷やすものでした。団塊の世代の人たちにこの話をすると「エヂソン・バンドみたいだ」と言われるのですが、私が生まれる前に流行ったアイデア商品らしく、私にはよくわかりません。ようするに白元アースさんの「アイスノンベルト」を首かオデコに巻くというような考え方です。
その意味では、頭のまわりの、どこか1箇所を冷やすアイデアは、昔からあったお馴染みの生活の知恵でした。新しいのはUSB電源で冷えるプレートを使っているところです。