食べ放題が苦手な人も楽しくなってしまう「焼肉きんぐ」の秘密

次に現在の焼肉業態の最大の勝ち組企業と呼ばれている物語コーポレーションの「焼肉きんぐ」の戦略をみていきましょう。

「焼肉きんぐ」は業態的には焼肉の食べ放題のチェーンということになるのですが、従来の食べ放題チェーンとは違う特徴があります。ひとことで言えば、そのウリは「食べ放題」ではなく「選びたい放題」なのです。

私は経済評論家として飲食店の記事を書く場合は自分で実食するだけでなく、誰かを連れていきます。そうすることで私の個人の感想ではない別の意見が発見できるのですが、今回の記事では「焼肉きんぐ」に行く際、わざと食べ放題が苦手な人に声をかけました。

食べ放題が苦手な人というのは少子高齢化社会ではむしろ多数派で、要するに胃袋はそれほど大きくない、食事は多少高くてもおいしいものを少しだけのほうがいいという人です。そんな人をわざと「焼肉きんぐ」に連れていったのです。

そして実食後にさりげなく感想を尋ねたところ「今日のお店は楽しかった」と言うのです。ここに「焼肉きんぐ」の躍進の秘密があります。

選び放題の100分間のレジャー

実は「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションは、その社名通り「物語」として飲食業を捉えています。今回の記事とは別の話になるので簡単に触れるにとどめておきますが社員にとっても仕事が物語になることを大切にして、その従業員一人ひとりの物語が積み重なることで大きな差異化が生まれると考える会社です。

その物語コーポレーションは「焼肉きんぐ」業態について「食べ放題」ではなく「選びたい放題の100分間のレジャー」だと説明しています。終わってみれば食べ放題を苦手にしている同伴者はずいぶんといろいろ注文をして楽しんでいました。

「焼肉きんぐ」にはメインの肉料理、季節の限定商品からサイドメニュー、デザートメニューまで常時120品目の商品が用意されているそうです。「4大名物」と自称している「きんぐカルビ」や「上ハラミステーキ」などの人気メニューはボリュームもたっぷりなのですが、実はそれ以外のメニューの大半はおそらく意図的に他チェーンよりもボリュームを抑えているようです。

これは私の観察なのですが、一皿一皿が少ないがゆえに食べ放題が苦手な人でも普段の倍近く、さまざまなメニューを楽しむことができるようです。私自身は好きなものを繰り返し食べる嗜好しこうなので、カルビを6皿、卵かけごはんを2杯、デザートにソフトクリームを2度おかわりしましたが、もちろんそういう食べ方もできるわけです。

画像=物語コーポレーション
きんぐ塩タン【ポーク】2人前
画像=物語コーポレーション
牛ハラミ(タレ)2人前
画像=物語コーポレーション
カルビ(タレ)2人前
画像=物語コーポレーション
ロース(タレ)2人前

「焼肉きんぐ」は一皿の量が少ないので様々なメニューを楽しめる。

もうひとつ食べ放題の苦手な同伴者が称賛していたのが席の広さです。もともと「焼肉きんぐ」は広いロードサイド店舗の割には席数が少ない特徴があります。ゆったりと席を設計していて、コロナ禍でも隣の席との距離がまったく気になりません。従業員の教育もしっかりしているとみえて店内も清潔です。

それで100分があっという間にすぎてしまう。このような「楽しいレジャー体験戦略」で成長している「焼肉きんぐ」ですが、ではこれから経済事情が変わったら苦境に陥ることがあるのでしょうか?