逆境でも最後まで生き残る可能性が高いのが「焼肉きんぐ」

実は私は焼肉業態に今後、冬の時代が来た場合に、最後まで生き残る可能性が高いのが「焼肉きんぐ」だと踏んでいます。そこには「ふたつの余力」と「ひとつの条件」があります。

「焼肉きんぐ」は今後、諸物価が値上がりしても生き残れるふたつの「余力」があります。ひとつは生産性の面なのですが、実は通常の飲食店と比較して今のところ従業員の数が多いのです。

鈴木貴博『日本経済 復活の書』(PHPビジネス新書)
鈴木貴博『日本経済 復活の書』(PHPビジネス新書)

「いやいや、それで苦しくなって従業員を切ってしまったら、物語が成立しないじゃないですか?」

と思うかもしれませんね。それはそうなのですが、今、お店のフロアには従業員以外に1台、ソフトバンクの配膳ロボットが活躍しています。

経営コンサルタントの視点で彼の働きぶりを眺めると、おそらく近い将来、2台、ないしは3台ぐらい配膳ロボットを採用してもお店がまわるというか、そのほうが顧客満足はもっと高まりそうです。

他の食べ放題業態はお客さんが自分で取りに行くことで生産性を確保しているところを「焼肉きんぐ」はタッチパネルで注文してなんども従業員とロボットが届けるオペレーションを大切にしている。その業務プロセスにまだカイゼンの余地があるというのがひとつめの余力です。

「焼肉きんぐ」に待ち構える落とし穴

そしてもうひとつの余力が「焼肉きんぐ」が売っているものが飲食というよりもレジャーだということです。つまり物価が上がった時に他の焼肉業態よりも値上げが通用しやすいのです。これは不況下でも東京ディズニーリゾートの入場料がひたすら値上げされているのと同じ理屈です。

むしろこれから物価の値上がりで苦しくなるのは、安さをウリにしている競争相手の焼肉店でしょう。すでに中小の焼肉店の経営が苦しくなってきているというのは冒頭にお話しした通りですが、「焼肉きんぐ」の楽しさを消費者が体感すればするほど、値上げ局面では他の焼肉チェーンへの不満が高まります。

「どうせ物価が高騰しているんだし、どうせ外食するなら焼肉きんぐにしようよ」

と消費者が言い出すのです。

最後に、ひとつの条件です。この予測は親会社の経営がうまくいっているという前提の話です。焼肉以外の業態を含めて大規模チェーンを運営するには資本市場からの資金調達が不可避の時代です。

名前は挙げませんが、過去にダメになった飲食チェーンの共通項は経営者の判断ミスや資本市場からのプレッシャーで、良かったサービスが改悪されたことが転落のきっかけであることが多い。そのような時代ですから今、勝ち組のチェーンもいつまでも勝ち続けるのは難しい時代だと思います。やはり消費者から見れば「焼肉に行くなら今のうち」ということかもしれません。

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