フランスの水メジャー社員が内閣府に出向していた

この麻生副総理のワシントンでの発言から五年。二〇一八年についに改正水道法案が日本の国会で議論され始めた。

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そのさなか、大きな疑惑が持ちあがった。水メジャーとも、ウォーター・バロンとも呼ばれるフランスの巨大企業、ヴェオリア社日本法人の社員が、内閣府に出向していた。しかも公共事業の民営化を担当する「民間資金等活用事業推進室」に政策調査員として二〇一七年春から在籍していたというのだ。そこに利益誘導はあったのか、なかったのか。

ところで、この推進室とは「PPP/PFI推進室」とも呼ばれるが、「PPP」とは「官民連携」(Public Private Partnership)の略語で、公共サービスの運営に民間を参画させる手法を指す。もうひとつの「PFI」(Private Finance Initiative)とは、「公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法」だと内閣府は説明する。

つまり、官民連携や民営化を推進する司令塔とでもいうべき部署が「PPP/PFI推進室」である。そこに、当該の民間企業から出向したスタッフがいたわけだ。

国会で追求された政府の苦し紛れの回答とは…

「最もこの法案で利益を得る可能性のあるヴェオリア社、水メジャーですよね。(略)まさにその担当者がこの内閣府PPP/PFI推進室にいるんですよ。これって、受験生がこっそり採点者に言って自分の答案を採点しているようなものじゃないですか」

この驚愕きょうがくの事実を参議院の厚生労働委員会で社民党の福島みずほ参院議員が明らかにしたのは二〇一八年一一月二九日のことだった。

このとき、国会では改正水道法の審議が大詰めを迎えていて、法案にはコンセッション方式が盛り込まれていた。コンセッション方式とは、公共施設の所有権をもった自治体が、「運営権」を民間企業に売却する民営化手法のことである。法案が成立すれば、外資系水メジャーが本格的に日本に進出することになると予測されていた。

そんな折に、世界三大水メジャーのひとつ、ヴェオリア社の日本法人社員が水道民営化を進める内閣府でPPP/PFI推進を担当していたというのだ。

福島議員の「利害関係者の関与」ではないかという追及に、内閣府は「ヴェオリア社と利害関係はない。女性職員は政策立案に関与しておらず、単に資料を持参したり、メモを取るなどの業務を担当しているにすぎない」と釈明に追われた。