地銀だけが優遇されるモヤモヤ感
もちろん、公的資金による資本増強により、地銀の経営が安定し、コロナ禍で疲弊する地元企業向けの貸出余力が増え、企業業績の向上により、地元の雇用と納税が増え、地域経済が好転すれば、納税者である国民の理解も得られるだろう。
しかしながら、実態は、コロナ対応や地域経済の支援という「錦の御旗」のもと、公的資金が半永久的に塩漬けとなり、上場する民間企業である銀行という特定業種のみを守り、温存するために使われているのであれば、大問題だろう。
「俺たちは銀行だから、守られて当然」。地銀内部にそんな不遜な考えがあるのではないかと他の業種で働く大多数の人々や一般市民が怒ってもおかしくない。
度重なる銀行への公的資金の注入が、本当に地元企業や地域経済に資するものなのか、少なくとも、店舗や人員のリストラ、配当の停止や削減、経営責任の明確化、そして返済スケジュールなどは、制度的に求められていない場合でも、上場する株式会社として、公表・実行すべきではないだろうか。
末路は、合従連衡か、銀行免許返上か
地銀再編や地銀衰退が叫ばれて久しい。人口減少が進む一方、ネット銀行やスマホ銀行など異業種の進出も続き、先行きは厳しい。
こうした環境下、例えば、資産規模で1兆円以下、時価総額100億円以下、コア業務純益が10億円以下といった地銀がこの先も、同じ経営主体、同じビジネスモデル、同じ商品ラインナップで生き残れる可能性は低くなってきている。その上、公的資金を抱えていればなおさらだ。
単独での生き残りは事実上困難であり、現在の苦境を打破するには、店舗や人員のリストラを実施した上で、規模の経済を得るための合従連衡となるはずだ。
2022年10月には、愛知銀行と中京銀行が経営統合に伴い持ち株会社を設立するなど、生き残りをかけた地銀再編も進んでいる。現在、行き先が未定の地銀も、大手地銀やSBIグループ入りといった選択が迫られることになろう。
場合によっては、公的資金が必要になるほど厳格な自己資本比率規制など、銀行に課せられたさまざまな厳しい規制から逃れるため、銀行免許を返上してノンバンクとなるケースも考えられよう。同じように可能性があるのは、M&Aや事業承継仲介の会社になる、地域商社や人材紹介会社として生き残る、といった動きだ。いずれの場合も、リストラが大前提にはなる。
最も大切な信用力が失われる
借りたお金は期限までに返すことは、現代社会の仕組みにおける基本中の基本の一つだ。常日頃、個人から中小企業や大企業に至るまで厳格に取り立てに回っている銀行自身が、公的資金返済という形で、その振る舞いを問われているのだ。
足元のコロナ禍や物価高で、多くの個人、企業、自治体も四苦八苦し、家計や業務や財政をやりくりするなか、業績が悪くなると公的資金が何度も申請できる地銀は甘やかされているのではないだろうか。地元住民や企業などの離反により、地銀にとって最も大切な信用力が失われる事態となる前に、自ら律し、行動する必要がある。