経営トップは変革の後押しや精神的支柱の役割を
──経営者の意識改革が重要なのですね。
どんな組織でもいきなり変えるのは難しいものです。ですから、変革には継続的なチャレンジが必要です。しかし、放置しておくと人は易きに流れるものなので、挑戦の継続には強力な後押しや精神的支柱が欠かせません。それこそが経営トップの役割ではないでしょうか。
現状では、日本の大きな組織は社員が勝手なことをしないようにできています。それぞれが勝手に動くと業務に支障をきたすためで、こうした組織では社員が自力で組織変革を始めることなど期待できません。
だからこそ経営者の発信が必要なのです。確固たるメッセージを発信し、ときにはある程度の強制権も発動する。いつしかチャレンジし続けることが社風になり、変革の効果が表れてくるまで、経営者の方々にはぜひコミットし続けてほしいと思います。
投資家も企業の人づくりを注視している
──人材投資を進めるためには、まずは大企業が動くべきでしょうか。
ムード醸成のうえでは、やはり大企業が果たす役割は大きいと思います。いまの中心選手がもう一度新しいゲームに挑戦できるよう、次のイノベーターが育つよう、ぜひ積極的に人材投資に取り組んでいただきたいですね。
株式市場では、主要株価指数の構成企業でみると、株価純資産倍率(PBR、株価が「1株あたり純資産」の何倍であるか)が1倍を下回っている日本企業(TOPIX500)が約4割も見受けられます。アメリカ(S&P500)では約1割、ヨーロッパ(TOXX600)では約2割なのに、これは非常にさびしい数字です。
いま、投資家が中長期的な投資・財務戦略において最も重視すべきだと考えているものは人材投資ですから、大企業こそそこに取り組んでほしいところです。