マーケティング最強事例③ ブラックサンダー

食べ応えのあるチョコバーとして人気を集める有楽製菓「ブラックサンダー」。2018年にはシリーズの年間販売数量を2億本突破したほどの大ヒット商品だ。しかし、発売開始後すぐにヒットしたわけではなかった。

1994年に発売開始すると、九州エリアでは好調だったものの、全体としては苦戦が続いた。鳴かず飛ばずのまま10年が経った頃、ブラックサンダーに思い入れのあった社員がデザイン変更を直訴すると、「売れてないから好きに変えていい」と一任された。そこで、子供にも読めるように名称をアルファベット表記からカタカナ表記へ変更、女性からの評判が良かったことを受け、「若い女性に大ヒット中!」のコピーをパッケージに採用するなどし、デザインが一新された。その後、大学生協での販売からじわじわクチコミで広がり、2006年に人気ブログで取り上げられたり、2008年に体操選手がインタビューで好物として答えたりしたことをきっかけに、人気に火が付いた。

「義理チョコのニーズで大反響!」ブラックサンダーバレンタイン

ブラックサンダーの人気は一過性で終わらず、売り上げ好調が続いた。そこで、それまでは運に任せた部分があったが、2011年に社内にマーケティング部を新設し、さらに広めるための仕掛け作りが始められた。「王道ではなく、ちょっと枠からはみ出した面白さ」や「ブラックサンダーを消費者のコミュニケーションツールにしてもらう」という方針が消費者の心をつかみ、大きな成果を上げた。2013年の「ブラックサンダーバレンタイン」は、この方針で成功したキャンペーンの一つである。

写真=iStock.com/Olga Kurbatova
※写真はイメージです

チョコレートは2月のバレンタイン時期に売り上げが増加しやすいが、ブラックサンダーにはそれがなかった。しかし、本命チョコとして買われることは考えにくい。だったら、いっそのこと堂々と「義理チョコ」であることをアピールして、「ブラックサンダーらしく楽しんでもらう」ことを狙った。

それを形にしたのが、新宿駅の地下通路に「一目で義理とわかるチョコ」という強烈なコピーの広告を展開し、合わせて自動販売機「義理チョコマシーン」を設置するキャンペーンだった。特設サイトでユーザー登録をしてQRコードを取得し、それを義理チョコマシーンにかざすと、ブラックサンダー3個と「義理チョコのお作法」が入った「義理チョコの素」が無料でもらえるという仕組みで、期間は1週間、1日1000個限定で行われた。このキャンペーンはSNSで大きな反響を呼び、テレビ番組でも取り上げられ、連日、行列ができて1、2時間でなくなる盛況ぶりとなった。

このキャンペーンは、その斬新さから社内の理解を得るのに苦労したが、「ブラックサンダーの世界観を広げるため」と辛抱強く訴えて理解を得たという。翌年以降も、毎年異なる仕掛けを通じて、ブラックサンダーの「義理チョコとしてのニーズ」を新たに根付かせ、売り上げとブランドイメージを向上させた。

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