自社商品の独自性を確立し、消費者から愛され続けるにはどうすればよいのか。高千穂大学の永井竜之介准教授は「消費者の気づいていないニーズを新しく創り、それを満たすことがマーケティング的に最強だ」という――。
残ったパズルのピースでマーケティングの文字が完成するところ
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ビジネスの存在意義は「不」の解消にあり

ビジネスの基本となるのは「不」の解消である。人や企業や環境の不便、不自由、不都合、不利益、不満、不幸といった「不」を解消することがビジネスの存在意義と言っていい。便利にする、自由にする、都合を良くする、利益を生み出す、満足させる、幸せにする。こうした「不」を解消して「マイナスの状態を0に戻す」、そして「0の状態からプラスに伸ばす」ためにビジネスはある。

「不」は、何かに満たされていない状態を意味し、「ニーズ」という言葉に置き換えられる。だから、ビジネスでは「誰のどんなニーズを満たすか」が重要になる。ニーズを満たす方法の1つは、相手が心の底で「もっとこうだったら良いのに」と感じている「何か」を見つけて満たすことだ(「セブンティーンアイス」は最初は自販機ではなかった…「17歳の女子高生向けアイス」が急に売れ出した秘密)。これは、相手がすでに気付いていたり、隠し持っていたりする「今のニーズ」を探すもので、インタビュー、アンケート、観察などのリサーチを通じて探されやすい。ただ、リサーチは似たような答えにたどり着きやすく、競合他社同士で、狙うニーズとニーズを満たすための商品が被ることも珍しくない。

「ニーズを自ら創って自ら満たす」これがビジネスの最強パターン

ニーズを満たすもう1つの方法は、新しいニーズを提案して「たしかに、これは良い」と相手に気付かせ、その新しいニーズを満たすことだ。これは、相手が忘れていたり、気付いていなかったりする「未来のニーズ」を新たに提案するもので、リサーチでは発見することは難しい。「そんなモノ(使い方)があったんだ!」「すごい!」「面白い!」といった驚きと共に、相手の価値観を更新するような新しいニーズが提案できれば、ライバルと被らない、自社だけのオリジナルの市場を創ることができる。新しいニーズを自ら創って、そのニーズを自ら満たす。この自己完結型のビジネスができれば、マーケティング的に最強と言っていいだろう。その最強パターンを実現した3つの事例について紹介していこう。