誹謗中傷対策は侮辱罪厳罰化だけではない

ネットの誹謗中傷が、今や人権問題であることに異論はない。

侮辱罪の厳罰化は一定の抑止効果が期待されるものの、これだけで心ない投稿が一気に収まるわけではない。

被害を抑えるためには、プロバイダ責任制限法における発信者情報の開示要件をもっと緩和したり、侮辱罪の概念がない米国のプラットフォーマーから協力を得られる仕組みを整えたり、さまざまな手立てを講じる必要がある。

救済手段も、民事訴訟での損害賠償額を大幅に引き上げるなど、民事上の措置を拡充することが求められる。

山田健太教授は、ネットの誹謗中傷対策は既にさまざまな形で進んでおり、「今やネット空間は無法地帯でも野放し状態でもない」との認識を示したうえで、表現の自由の制約につながる法規制の強化よりも、それ以外の方策を充実すべきと論じた。

その通りだろう。

SNSの進展とともに、ネットの誹謗中傷をめぐる状況はより複雑化し、被害もより深刻になるかもしれない。それだけに、侮辱罪の運用は、きわめて慎重に行われなければならないし、表現の自由への影響を注意深く見守っていかねばならない。

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