例えば、カンカン照りの観光地でビニール傘を売らなければならないとしたら、これはどれだけ話術や経験が豊富な人でも厳しいでしょう。必要性もないし、荷物になる。わざわざ買う理由なんてありません。

しかし、突然にわか雨が降ってくれば話は別です。店先に大きなバケツを出し、その中にビニール傘を入れ、値札を貼っておけば、少々高かったとしても「助かった!」と喜ばれながらお客さま自らが買いにきます。

同じように、たまたま会社で事務処理をしていたら電話が鳴り、その電話に出るとあなたの会社の商品を購入したいという話を受けるかもしれません。

その意味で、私はいかにYESを言ってもらえるかではなく、「お客さまの欲求に沿ったNOはどこにあるのか?」を探すことが営業の基本だと考えています。

営業にも当てはまる「負けに不思議な負けなし」

「勝ちに不思議な勝ちあり 負けに不思議な負けなし」

この言葉は、プロ野球の名監督、野村克也さんの座右の銘であり、元は江戸時代の剣術の達人・松浦静山の言葉だとされています。

その意味は、負ける時には、負ける明確な理由があるということです。

つまり営業でいうならば、「運悪くNOになることはない」ということ。そこには、買わない理由、買えない理由、買いたくない理由、決断できない理由があるのです。

商品説明がいくら完璧でも、紹介しているものがいくら画期的なサービスであっても、売れない理由を放置したままでは売れません。ところが、YESにこだわると、決断を迫り、お客さまに直接「NO」と言わせてしまうことになります。

誰でも、NOと伝えるのはストレスのかかることなのです。だから、「セールスお断り」といったシールが玄関先に貼られるようになってしまったのではないでしょうか。

YESを前提にした営業は、営業自身にも、お客さまにとってもつらいことなのです。

ですから、“ストレスのない”営業をしたかったら、まずはNOを生み出している原因を知ることが第1。第2に、その行動を極力しないように改善をすること。そして、もしも事情があって失敗してしまった時には、フォローをするということが第3の方策です。

これらのことを意識して営業をしていくと、不思議とお客さまとの関係が続いていくようになります。

1度目はYESでなくても、その原因を解決していくことで2度目、3度目と関係性が深まり、信頼が生まれ始めます。

すると、「実は……」というお客さまの本音が出始めます。そうすれば、シンプルにその本音にお役立ちできるかどうかという判断基準になり、結果的にYESが増えていくことでしょう。

「NO」にある5つの段階

お客さまのYESには偶然の要素も大きいですが、NOには明確な理由があると言いました。では、具体的にはどんな理由があるのか?

私は、NOには5つの段階があると考えています。