ロシア軍の代わりに紛争国で殺戮を行う民間軍事会社

▽GRU指揮下の民間軍事会社「ワグナー」の暗躍

ロシア軍情報機関GRUが、ロシア軍が表立って行動できないときに、軍のダミーとして使っている民間軍事会社が「ワグナー・グループ」だ。所有者はプーチン側近の政商でクレムリンと直結している。

このワグナーはシリア、ウクライナだけでなく、リビア、中央アフリカ、南スーダン、モザンビーク、マダガスカル、マリなどに派遣されている。ワグナーは汚れ仕事を請け負うことが多く、それらの国でも独裁的な権力者もしくはいずれかの政治勢力の側に参加し、現地の反対派を弾圧する任務に就くことが一般的だ。その過程でおそらくそれなりの人数の現地住民を殺戮しているが、その活動は秘匿されている。

2022年4月5日、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が「マリで3月末に約300の民間人が、マリ政府軍と外国人戦闘員に殺害された」との報告書を発表した。この外国人はロシア人だったとの目撃証言があり、おそらくワグナーと思われる。

ウクライナ東部では侵攻前にすでに1万人が死亡

▽ドンバス地方侵略

ロシア軍によるウクライナへの不法な侵略行為は、2014年から継続している。最初はクリミア半島に軍を派遣して占領したが、その後ロシアに一方的に併合したと主張している。

黒井文太郎『プーチンの正体』(宝島社新書)

さらに、その勢いでウクライナ東部のドンバス地方に非公式に軍および軍情報機関を投入し、地元の親ロシア派を前面に立てて一部を占領した。その後のウクライナ軍との戦いの過程で2022年1月までにすでに約1万4000人が死亡している。これらの犠牲もすべてプーチンに責任がある。

以上のように、2022年2月に開始されたウクライナ侵攻よりずっと以前から、プーチンは数々の殺戮に手を染めてきた。ざっと計算すると、すでに推定で7万人近い殺戮に直接の責任がある。プーチンの事実上の配下のようになっているシリアのアサド大統領による殺戮の責任も加えれば、プーチンはなんと30万人をはるかに超える人々を殺してきた21世紀最悪の大虐殺者といえる。

プーチンは1999年以来、殺戮を続けている。ウクライナ侵攻以前に、すでにヒトラーやスターリン、毛沢東、ポル・ポトといったカテゴリーの人間だったのである。

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