現在の天皇が皇太子時代、1960年9月5日号の週刊新潮は「殿下、ズボンが太すぎます」という特集を組み、当時の山田東宮侍従長がフランクにロング・インタビューに答えているが、これが実におもしろい。
宮内庁は、皇室と国民の距離を縮め、彼らにも同様の悩みや喜びがあることを知ってもらう努力をするべきだと思う。
「やっぱりね、私みたいに怒りっぽい父親だと…」
眞子さんの結婚問題以外にも、この本の読みどころはいくらもあるが、私は、ところどころに秋篠宮の人間としての「素」がにじみ出ている個所を興味深く読んだ。
長女や次女との接し方については反省するところが少なからずあるとして、
「やっぱりね、私みたいに怒りっぽい父親だと……」
続けて、声を絞り出すように、
「よくないですね、そこはね」
私も子どもたちにはすぐにキレる嫌なオヤジだった。今さらだが、秋篠宮が後悔している気持ちはよく分かる。
こんなことも漏らしている。
「今度、生まれてくるとしたら、人間ではなく、ヒツジがいいかもしれない。ヒツジになってひねもすのんびりと草をはんで……ヒツジに生まれてきたら、なんとなく楽しいかもしれない」
失礼だが、秋篠宮とヒツジというのはよく似ているような気がする。皇室のしきたりや、身内の結婚問題に煩わされないで、のんびり空でも眺めていたい。その気持ちもよく分かる。
これまでも三笠宮寛仁親王がインタビューに答えたり、その長女の彬子女王が留学のときのことを出版したりしたことはあったが、皇嗣という立場の人間が、自分の内面の悩みを含めて、率直に語ったというのは、私が知る限りなかったと思う。
やや秋篠宮に肩入れしすぎるきらいはあるが、皇位継承順位第1位にある重要人物の肉声を記録した、第一級の貴重な時代の証言であることは間違いない。
秋篠宮も、このインタビューが出版され、多くの国民が読むことを前提に話しているとは思うが、彼の人間性を知る上でも、皇室と国民のあり方を考えるうえでも必読の書である。