家族ぐるみの付き合いがある元記者が描いた実像
話題の本『秋篠宮』(小学館)を読んでみた。
著者の江森敬治氏は元毎日新聞記者で、社会部宮内庁担当や編集委員を経験して、今年3月に退社してフリーになった。
著書には『秋篠宮さま』(毎日新聞社)や『銀時計の特攻 陸軍大尉若杉是俊の幼年学校魂』(文春新書)などがある。
秋篠宮と親しくなるきっかけは江森氏の妻にあったという。今から約40年前、大学を卒業した江森氏の妻は、学習院大学経済部で川嶋辰彦教授の副手をしていたそうだ。
川嶋教授の研修室には、川嶋夫人やセーラー服姿の紀子さんもよく顔を出していたため知り合い、仲良くなったという。
江森氏は川嶋教授とタイ北部の山村を訪れ、寝食を共にしながら川嶋教授が国際ボランティア活動にかける情熱を間近で見たこともあったそうだ。江森氏が結婚する際は仲人をお願いしたという。
秋篠宮と初めて会ったのは、紀子さんと結婚した翌年の1991年2月。秋篠宮夫妻が京都へ来ると聞き、江森氏は京都支局にいて、妻と一緒に宿泊先を訪ねたときだったそうだ。
以来、秋篠宮との個人的な付き合いは31年を超えた。宮内庁担当記者だったころ、誕生日前の記者会見で記者から毎回、「この一年を振り返って感想を」と聞かれるが、「漠として一年の感想をと言われても困ります」と、困惑した顔で江森氏に話しかけてきたというから、秋篠宮の相当な信頼を得ていたようである。
婚約内定に「おめでとうございます」と挨拶すると…
江森氏は秋篠宮をこう見ている。
「彼は秋篠宮としての特別な立場をなんら疑いもなく素直に受け入れるのではなく、自分をあくまでも客観的にとらえようとしていた。その姿に、私は新鮮な驚きと誠実さを感じた。皇族である前に一人の人間である――」(同書より)
この本全体も、人間・秋篠宮が何を考え、何に悩んでいるのかを読者に伝えようというトーンで貫かれている。
第1回のインタビューが始まったのは2017年6月。秋篠宮眞子さんと小室圭さんの婚約がNHKでスクープされた直後であった。
来客用の応接室で待っていると、スーツ姿でネクタイを締め、髪を黒く染め上げた秋篠宮が入ってきた。江森氏は婚約内定の祝意を伝えるために「このたびはおめでとうございます」と、“注意深く”挨拶したという。
「なぜ注意深くしたのかといえば、秋篠宮が眞子内親王の相手男性に対して不満を抱いているかもしれないと思ったからだ。男性へのバッシングが既に始まっていた」(同)