「下がるから売る、売るから下がる」の展開に
同年5月にFRBは景気が加熱して物価上昇予想が高止まりする恐れがあると判断し、0.50ポイントの追加利上げを行った。インフレ退治への断固たる姿勢が示されたといえる。大幅な利上げによって個人の消費は徐々に鈍化し物価上昇圧力も低下した。株価の上値も抑えられた。その後、2000年9月に“インテルショック(半導体大手のインテルが予想外に業績見通しを下方修正)”が発生し、ITバブルは崩壊したのである。
インテルショックをきっかけにしてナスダック市場を中心に米国株は下がるから売る、売るから下がるという展開が鮮明化した。消費者心理も悪化し、米国経済は減速した。2001年1月にFRBは利下げを開始し、景気を下支えした。その後、米国では資金が住宅市場に流入してITバブルから住宅バブルへの乗り継ぎが起き、景気は回復した。
GAFAのビジネスモデルも行き詰まりつつある
22年前の0.50ポイントの利上げ局面と比較すると、足許の米国における物価上昇圧力ははるかに強い。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策によって世界の供給制約が長期化するなどし、グローバルに物価上昇圧力がさらに強まる展開も予想される。
その状況下、米国の金融政策は依然として緩和的な余地を残している。FRBは考えうる最速のペースで追加利上げを実行し、金融政策を早期に正常化しなければならない。人々の生活の安定を守るために、インフレ退治を急がなければならないというFRBの必死さや危機感はこれまで以上に高まるはずだ。
それによって、米国の金利は上昇し、株価はこれまで以上に下落するだろう。1~3月期のGAFA各社の決算を確認すると、各社の成長期待は鈍化しつつある。サプライチェーンの混乱などによって国際分業の推進が難航するなど各社の高成長を支えたビジネスモデルが行き詰まりつつある。22年前のインテルショックのように、近年の世界経済の成長を支えた主要なIT先端企業の業績懸念が高まり、それをきっかけにしてナスダック市場をはじめ世界的に株価が大きく下落する可能性は一段と高まっている。