円の下落が続けば「円安スパイラル」に陥る
ロシアのウクライナ侵攻によって資源価格が急騰し、世界はインフレに向かって突き進みつつある。
日本も例外ではない。というより、急激な円安が進んでいることから、輸入価格の高騰に拍車がかかっている。このまま進めば「円安が円安を呼ぶ」という円安スパイラルが発生し、壊滅的な状態になりかねない。
私は、3月に刊行した『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)において、円安こそが日本経済を貧しくした基本要因であると指摘し、20年以上にわたって続いた円安政策から脱却する必要性を強く訴えた。
いま、円安政策からの脱却は、一刻の猶予も許されない緊急の課題になった。
ルーブルに次ぐ下落率 円の独歩安
円・ドルレートは、2021年の秋以降、1ドル114~115円程度の状態が続いていた。しかし、今年3月中旬から1ドル120円を超える、異常といえるほど急激な円安が進行した。こうなった要因は、日米金利差の拡大だ。とくに、次の2つが大きい。
第1は、3月21日にアメリカFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、利上げをスピードアップし、1回で0.5%の引き上げもあり得るとしたことだ。これを受けて、アメリカの中・長期債の利回りが急上昇した。
第2は、これに先立つ3月17、18日に、日本銀行が政策決定会合で金融緩和継続を決めたことだ。黒田総裁は、「円安が日本経済にとって望ましいという構造は変わらない」と発言した。
世界の中央銀行が、アメリカの利上げに対応すべく、競って金利の引き上げを行っている。そうした中で、日本だけが低金利を継続すると表明したため、円が急落したのだ。下落率は、ロシアのルーブルに次ぐ大きさだ。ルーブルを除けば、円の独歩安といってよい。
ウクライナ侵攻が始まった2月下旬以降、エネルギー関連の価格は一段と上昇している。これが続くと、後で見るように、日本の経常収支赤字が定着し、それがさらに円安を誘うという可能性も出てきた。