止まらない円安、迫るインフレの影
猛烈な円安が進んでいる。東京外国為替市場では4月20日に一時、20年ぶりに129円台を付けた。急激なインフレが進行している米国のFRB(連邦準備理事会)が量的緩和の縮小を決め、金利を引き上げる姿勢を鮮明にしている一方、日本銀行は「円安は日本経済にプラス」だとして大規模な金融緩和策の継続を表明。これによる日米金利差の拡大から為替が円安ドル高へと進んでいる。
2月24日にロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まったことで、エネルギー価格も大幅に上昇。ロシア産天然ガスに依存しているドイツなど欧州諸国ではガスや電気料金が急上昇しており、インフレに拍車をかけつつある。日本はロシア産エネルギーへの依存度はそれほど高くないものの、全LNG(液化天然ガス)輸入の8%程度をロシアに頼っている。石油やガスのほとんどを輸入に依存している日本にとって、エネルギー価格の上昇はインフレへと結びつく。しかも円安で輸入品価格はさらに上昇、日本でもインフレの影がひしひしと迫っている。
巨額の日本国債を抱え込んでいるから、金利を引き上げられない
大規模緩和を続けるという日銀の姿勢は、このインフレ懸念を放置するということにほかならない。黒田東彦総裁が就任以来言い続けてきた2%の物価上昇率が統計数字に表れていないことから、日本でインフレは起きていないというわけだ。3月の消費者物価指数は7カ月連続で上昇した。前年同月比0.8%の上昇に止まっているが、庶民感覚としては輸入品を中心に値上げが続き、すでに物価上昇が始まっている。
実際、3月の国内企業物価指数は前年同月比9.5%も上昇、指数は1982年12月以来39年3カ月ぶりの高水準になっている。企業が本格的に最終価格への転嫁を始めれば、日本の消費者物価も大きく上昇することが予想される。
それでも日銀がインフレ抑制策、つまり金利の引き上げに動かないのは、9年におよぶ大胆な金融緩和の中で、日銀が巨額の日本国債を引き受けて抱え込んでいることが主因だとの見方も出ている。金利上昇は債券価格の下落を意味するので、債券価格が大幅に低下すれば日銀は債務超過に陥るため、金利引き上げができないという指摘だ。この結果、円安を放置する結果になっている。