分岐点の2021年10月に岸田内閣は発足している

ところで、分岐点となった2021年10月というのは何があったのか。岸田文雄内閣の発足である。「新しい資本主義」を打ち出し、これまでの路線とは違った経済運営を掲げてスタートした。総裁選に出馬した当初の段階では「新自由主義的政策は取らない」と従来の規制改革による成長戦略を否定。金融所得課税の強化など富裕層に負担を求めて庶民に分配する「分配重視」を打ち出した。

これは市場関係者から猛反発を食らう。財界人の一部からは「新しい資本主義は社会主義ではないか」と言って声まで上がった。岸田首相が金融課税強化に触れるたびに株価が大きく下がる「岸田ショック」が起きた。

国会議事堂
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結局、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の具体的な中味は半年たっても明らかになっていない。負担をどこに求めるかを明示しないままに、新型コロナ対策という名の「バラマキ」を続けている。岸田首相の側近は、「何よりも7月の参議院選挙に勝つことが第一」と明言しており、選挙にマイナスになるような政策は打ち出さないという姿勢だ。ちなみに7月の参院選を乗り切れば、衆議院を解散しなければ3年間は選挙がない。選挙に勝利してから具体的な政策を打ち出す、ということなのだろう。

財政支出をすればするほど、円安は進む

ところが経済の動きは待ってくれない。円安によって物価の上昇に拍車がかかりつつある。これに対して岸田内閣は「財政出動」で物価を抑えるという施策に打って出た。ガソリン価格の上昇を抑えるために、石油元売り会社に補助金を出し始めたのだ。当初は1リットル5円だった補助金の上限を3月から25円に引き上げたものの、原油価格の上昇に飲み込まれ、4月26日には1リットル35円に引き上げることを表明した。岸田内閣は「市場」に対して、まさに戦いを挑んでいるのだ。

だが、皮肉なことに、そうやって財政支出を膨らませれば、国家財政はさらに悪化し、結果として円安が一段と進むことになる。円安が進めば輸入原油に依存する円建てのガソリン価格はさらに上がる。自ら足元を掘り崩しているような政策をとっているわけだ。これも選挙に勝つまで、ということなのだろうか。