22年前のように株価の大幅下落が起きるか

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ退治に必死だ。5月の連邦公開市場委員会(FOMC)は、0.50ポイントの追加利上げを決めた。それによって、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)レートの誘導目標レンジは、0.25~0.50%から0.75~1.00%に引き上げられた。

2022年5月4日、記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長(アメリカ・ワシントン)
写真=EPA/時事
2022年5月4日、記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長(アメリカ・ワシントン)

0.50ポイントの利上げは22年ぶりだ。その22年前は、0.50ポイント利上げの後、2000年9月に“インテルショック”が起き“ITバブル(株式のバブル)”が崩壊した。0.50ポイントの追加利上げは、株価の大幅下落を想起させる。1990年代以降のFRBの金融政策を振り返ると、利上げ局面の初期段階では0.25ポイント程度のペースで政策金利が引き上げられた。終盤に差し掛かると0.50ポイントなど大幅な追加利上げが実施された。

今回もFRBは大幅な利上げを実施せざるを得なくなっている。物価は高騰しており、FRBの危機感は高まっている。今後、FRBがより大きな幅で追加利上げを実施し、バランスシート縮小を加速させる可能性は高まっている。それによって米国をはじめ世界的に金利は上昇し、株価が相応の値幅で下落する展開が懸念される。

FRBは「インフレ退治」に必死になるが…

4月に入り、インフレ退治に必死に取り組む危機感を示すFRB関係者が急速に増えた。5月4日、FRBは0.50ポイントの追加利上げと6月1日からのバランスシート縮小を発表した。記者会見でパウエル議長は、6月と7月にも0.50ポイントの追加利上げを実施する考えも示した。これまでに増して、パウエル議長をはじめFRB関係者はインフレ退治に取り組む危機感を鮮明に示したといえる。

3月、米国の生産者物価指数は前年同月比で11.2%上昇した。FRBが物価の指標として重視する個人消費支出の価格指数(PCEデフレータ)は同6.6%上昇し、2%の物価目標を大きく上回っている。米国の需要は旺盛であり企業はコストを価格に転嫁しやすい。

労働市場はかなり急速なペースで改善している。求人件数は調査開始以来の過去最高を更新した。賃金は右肩上がりで推移している。人々はモノやサービスの価格が上昇するとの見方を強め、一度上昇すると下がりづらい家賃も上昇している。その状況が続けば、家賃を支払うことのできない家計が急増する恐れがある。