医者は「平均的なこと」しか言わない

ただし、これはあくまでも僕の話である。「休肝日など作らずに毎日酒を飲むのが正しい」と言いたいわけではない。中には毎日1合程度酒を飲むせいで体調を崩す人もいる。例えば、アルコール分解酵素が十分分泌されないタイプの人は、アセトアルデヒドの分解が遅れ、二日酔いになりやすかったり、食道がんになりやすかったりする。

そういうタイプの人もいるというだけで、誰もがそのリスクにさらされているわけではない。人間には個人差というものがあるのだから当たり前だ。

一方、医者というのは平均的なことしか言わない生き物だ。

酒の飲みすぎに注意して、週に1日か2日は休肝日を作っている人のほうが、平均的には健康を維持しやすいというのは正しいかもしれないけれど、だからといってすべての人がそうだというわけではない。平均値を盾に、同じことを全員に当てはめようとするのは、マイノリティを抑圧しているに等しいと僕は思う。

個人差を無視したアドバイスを鵜のみにするのは危険

僕みたいに毎日好きな酒を飲んでいても取り立てて問題などない人もいるし、僕以上に浴びるくらいの量を飲んでも平気な人だっている。そうかと思えば、ちょっと酒を飲んだだけで具合が悪くなってしまう人だっているのだから、絶対の正解などないはずだ。タバコに関しては、若い頃は1日60本から多い時は90本くらい吸っていたが、33歳の時、一切やめた。タバコを吸うと止まらないほどの咳が出るようになり、「このまま吸い続けているとそのうち死ぬかもしれないな」と思ったからだ。

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ただし、これももちろん僕の話である。「酒はいいけど、タバコはやめたほうがいい」ということでは決してない。例えば、友人の養老孟司は僕とはまったく逆で、体に合わなくなったと言って、60歳くらいの頃に酒を飲むのはやめたようだが、タバコはずっと吸っている。

酒もタバコも健康の敵のような言われ方をするが(一般的にはタバコのほうが分は悪そうだ)、それが本当に敵であるのか、仮に敵だとしてどの程度の敵であるかは人によって違う。世の中で健康の常識とされていることはさまざまあるが、そんなものは平均的にいえばそうだという単なる一般論であって、誰にでも当てはまるわけではない。

自分が少数派のほうである可能性だってあるのに、平均的な話でしかない医者のアドバイスや世の中の情報をただ鵜呑みにすれば、かえって逆効果ということだってあり得ると思う。