「命の重みが等しいかなんて言ってたら、蚊も殺せないな」

繁延あづさ『ニワトリと卵と、息子の思春期』(婦人之友社)

夫の報告はそこまでだったけれど、晩ごはんのときに、飛んでいる蚊をパチンとしながら「命の重みが等しいかなんて言ってたら、蚊も殺せないな」と言った夫の言葉が、どこか長男を擁護しているようで、おかしかった。いつも長男と言い争ってばかりの夫だけど、ひとりきりで意見を言う長男を、また違った目で眺めていたのかもしれない。

わが家は長崎に越してきて以来、近所の猟師さんからもらう猪や鹿の肉を食べている。私が台所で野生肉を料理する姿を見て、食べて、狩猟にも同行したことのある長男。“経済動物”という言葉から察するに、食肉の背景に思い巡らせたことがあるのだろう。そんな彼にとって、人間の口から発せられる“命の重みは等しいか”という言葉は、違和感があったのかもしれない。

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