義両親にしてあげたことや使ったお金など細かく書き残す

やがて、介護認定調査の結果が出る。義父は要介護3。義母は要介護1。義父は泊まり中心、義母は通い中心で、同じ小規模多機能施設へ預け始めた。

能登さん夫婦は2人とも介護福祉士。介護には慣れているとはいえ、ピンチに瀕した際の連携プレーが素晴らしい。特に、能登さんの頭の回転の速さが際立っている。

しかし、まだ義実家が売れていないため、金銭的には苦しいはずだ。当初、能登さん夫婦は、義両親に使えるお金は、月15万円以内と考えていたが、約20万円になってしまっていた。それでも、能登さんは落ち着いていた。

「足りない分は夫が立て替えて、義実家が売れたときに返してもらうつもりです」

能登さんは、義両親との同居前に、相続に詳しい知人から「最近は嫁の介護に対しても相続が発生するから、義両親にしてあげたことや使ったお金など、細かく書き残すと良いよ」とアドバイスをもらったため、ずっと記録しているという。

ただ献身的に介護するのではなく、もらうべきものはもらう。そうした姿勢が潔い。能登さん夫婦は節約のため、義実家の片付けや物の処分は、業者に頼まず自分たちでおこなったが、おかげで2人とも腰を痛めてしまった。

義実家の片付けは順調に進んでいたが、市の無料相談で弁護士に相談したところ、名義人である義父の認知症がネックで、「売却はかなり難しいです」との返答。

能登さん夫婦が肩を落としていると、偶然数年ぶりに会った知人が、「先日、認知症になった親の家を売却したところ」だという。「渡りに船」とばかりに詳しく聞くと、知人いわく、「認知症でも、本人がうなずければOK」と言う。

翌日、知人が利用した不動産屋に電話で問い合わせると、「意思確認の時に名前が言えて、『売却しますか?』と聞かれてうなずければ問題なし」との返事。調べてみると、認知症になった人の不動産を専門に扱う業者もあることが分かり、専門の業者を含め、複数の不動産屋に査定を依頼した。

義実家は売却でき義父は特養入所できたが、嫁は病魔に襲われ…

2019年10月。能登さんは自宅近くで介護認定調査員として働き始め、家事・育児に義母の介護、義父の面会、義実家の庭の手入れなどに追われた。

12月。3歳の長男に原因不明の発熱が続き、かかりつけの小児科から総合病院を紹介される。検査の結果「ヒトメタニューモウイルス」が重症化したことによる、肺炎と気管支炎の併発と分かり、5日間入院。能登さんは病院に泊まり込み、つきっきりで看病した。

2020年2月。能登さんは仕事中に突然、激しい頭痛と目眩に襲われ、嘔吐してしまう。何とか子どもたちを保育園に迎えに行くが、家事まではできない。夜勤明けの夫に家事を頼み横になるが、翌朝も良くならない。無理やり仕事に行くが、途中で動けなくなり、夫に迎えに来てもらい、脳外科へ向かった。

脳外科では、CTを撮るも異常なし。医師からは、「極度のストレスと疲れ、筋肉の緊張からくる症状と思われます。漢方を処方しますので、様子を見てください」と言われた。

写真=iStock.com/sestovic
※写真はイメージです

能登さんは仕事を減らし、義母のショートステイを増やし、夫のサポートを受けながら養生に努める。幸い、出された漢方薬が合っていたのか、症状は落ち着いてきた。

数日間ショートステイを利用すると、義母は入浴を拒否するらしく、いつもひどい臭いをさせて帰宅。臭いに敏感な長男は、あまりの悪臭に嘔吐してしまったこともあった。