借金ありの認知症の親から金品をとろうとする義姉の神経
そんな中、まだ幼い子どもたちは、度々体調を崩す。しかし認知症の義両親には言ってもすぐに忘れてしまうため、寝かしつけ中でもお構いなしにやってくる。能登さんは気が休まるときがなかった。
2019年2月。義母が「お金がない」「お金を下ろしてきて」と何度も言うようになり、もしやと思った能登さんが聞くと、息子の就職と、娘の大学が決まったので、義姉がお祝いを催促してきたらしい。能登さん夫婦は、借金があり、認知症になった両親から金品をとろうとする義姉の神経を疑った。
能登さんは、図書カード5000円分ずつと、お守りを贈ることを提案。するとお守りが大好きな義母は大賛成し、近所の寺院に義父と一緒に行き、就職祝いに「学業成就」、大学入学祝いに「合格祈願」のお守りを購入。能登さんが郵送し、夫は義母のスマホから自分たちの連絡先以外を削除した。
義父はケアハウス入所も女湯に入ったり、トイレ以外で放尿したり
同年4月。義父は能登さんの名前を忘れてしまっただけでなく、態度がよそよそしくなった。今までは「千秋さんおはよう。いつもありがとう」とフレンドリーに接していた義父だが、「ご苦労さまです。いつもすみませんね」と他人行儀。少し怒りっぽくなったこと、短期記憶がかなり怪しくなっていることから、「文字が書けるうちに早く実家が売れてほしい」と願いつつ、片付けに焦る能登さん夫婦だった。
そして7月。能登さんは退職。育児と介護を両立するため、夫と相談の上、自宅に近いエリアで再就職を目指すことに。
7月末には、かねて申し込んでいたケアハウスに空きが出た。介護が付いたケアハウスは高額なため、付いていないところを選択。能登さん夫婦のどちらか、もしくはヘルパーが介助しに行く必要があるが、能登さんにとっては、家族水入らずの時間や一人時間が増えるのはうれしかった。
例によって義母は嫌がり、能登さんが「1階の床下の工事をする間だけ」と機転を利かせて入所させたが、平穏は長くは続かなかった。
義父の徘徊が増え、勝手に他人の部屋のドアを開けたり、女湯に入ったり、トイレでないところで放尿してしまうなど、問題行動があまりに多かったため、6日で退所することになってしまったのだ。
かなり症状が進んだ義父と再同居することに不安を感じた能登さん夫婦は、すぐに次の入所先を探す。6日間とはいえ、ケアハウスの利用料、ハウスクリーニング代などがかかるため、義父母の両方を施設には入れられない。
ひとまず義父だけ仮に預け、その間になるべく費用の安い施設を探す。やむなく再同居することになった義母は、夜間せん妄がひどくなっており、「家に帰る!」「お金がない!」などと繰り返し、能登さんは睡眠不足に悩まされた。