コロナ禍もプラスに変え、ユーザー開拓を目指す

台湾、香港、タイ、日本、中国国内、そして2022年度にはフランス進出を目指すインフォリッチ。コロナ禍で人流が減った分、利益も減ったが、それさえも明るい材料だと捉えている。

「中国では同業者が苦戦しています。それは最適配置のデータ分析がきっちりできていなかったから。私たちも2万台を設置するまでその時間がありませんでしたが、緊急事態宣言期間中でも、コンビニには設置し続けることができた。その3カ月でじっくりとデータを解析できたんです」

現在、国内で展開しているのは3万台超。「2026年度までに10万台」というプランをひき、チャージスポットのアプリ利用者は右肩上がりを続けている。

「どれだけ新しいスマホやアプリが出てもバッテリーが切れたらおしまいです。最近はペイメントもスマホ頼り。バッテリーはその肝となる部分なんです。ターゲットにしているユーザーの大多数にまだまだリーチアウトできていません」

「音楽という手段だけでなくビジネスで世界をつなげたい」

最初に広い面で設置したことは、後発事業者の参入の抑止力となる一面もある。ある意味、オセロの角を押さえたようなものだ。集められたデータをもとにサービスをカスタマイズして、テーラーメイドしていく。それは設置してくれた場所のさらなる利便性にもつながる。

今後はインフラという文脈でバッテリーを位置づけ、バイク、傘、駐車場などのシェアリングサービスを一つのアプリで完結できることを目指すという。まだまだ高みを目指す秋山の鼻息は荒い。

撮影=西田香織
スマホバッテリーを基軸にシェアリングの輪を広げたいという秋山社長

彼自身を形作ったラップと、ビジネス、どちらが楽しいかという質問に秋山は静かに笑った。

「困難にぶつかった時の突破の仕方は一緒です。結果が出るまでは苦労するもの。でも、コロナという逆風さえもどうオプティマイズするのかは自分次第。昔は音楽で日本と香港をつなげたかった。守るべき家族ができた今は、音楽という手段だけでなくビジネスで世界をつなげたい。自分の中では目指す方向は変わらないですね。この先もどんな新しい価値を提供できるか、探し続けていきたいと思っています」

(文=キンマサタカ)
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