7連続勤務で新車を買い替えた50代の同僚

働くモチベーションは人それぞれである。元タクシー運転手の同僚は50歳を少し過ぎた年齢だが、「昼夜7連続勤務は当たり前」と豪語していた。しばらくすると彼が新車を買ったと警備員仲間で話題となった。私と同じ町内に住んでいた同僚は競輪が趣味で、ほとんど働いたお金を注ぎ込んでいた。

柏耕一『交通誘導員ヨレヨレ日記』(三五館シンシャ)

私がこの会社で現任教育(再教育)を受けた際に、ある講師は「月に57勤務をした女性隊員さんがいましたが、勤務中に倒れ救急車で病院に運ばれました。会社としては勤務中でありがたかったですね」と意味不明の感謝をしていた。

何が「ありがたかった」のかよくわからない。それ以上の説明はなかったからだ。労災がらみなのか、それとも単に撃ちてし止まんと会社に貢献してくれたからなのか。今は過労死問題が大きな社会的テーマとなっているので、この種の発言は即レッドカードだろう。

ともあれどんな世界にも常識を超えた働き方をする人はいるものだ。しかし、自分の肉体を酷使していいことはないと思う。いずれそのツケは自分が払わなければならないからだ。だが、こればかりは人それぞれの事情があるから野次馬的な発言は慎まなければならない。

交通誘導員は社会との最後の“蜘蛛の糸”

余計なお世話かもしれないがテレビを見ていると、失業してホームレス寸前の人やマンガ喫茶に寝泊まりする人たちの姿がよく取り上げられている。

肉体的に健康で精神的にも病んでいない人々を見るにつけ、この人たちの何割かはこれほど苦しい生き方を余儀なくされるなら警備の世界に活路を見出せるのにと思うこともある。

警備を一生やりなさいと勧めるわけではない。働けば日払いもあり家がなければ寮もある。否が応でも社会とのつながりもできる。とりあえず就業すれば最低限の社会生活が可能なのが警備員かもしれない。

仕事として楽しい楽しくないは別として、決して悪い選択ではないのではないか。土壇場に追いつめられた人にとって交通誘導員の仕事は社会との最後の“蜘蛛の糸”かもしれない。

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