中高年の転職が活発になってきた。しかし、その転職が成功するとは限らない。約900人にインタビュー調査した健康社会学者の河合薫さんは「40代、50代の転職で、うまくいかない人は『どこにいたか』をアピールし、うまくいく人は『何をしてきたか』をアピールしている」という──。(第4回/全6回)

※本稿は、河合薫『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「あなたの後輩で誰かいい人いませんか?」

会社に見切りをつけるべきか、留まるべきか? 転職は、50歳前後の会社員の最大の悩みといっても過言ではない。

しかし、「絶対にこんな会社やめてやる!」と盛り上がっていた人でも、40代前半までは「定年前に絶対にやめます!」と豪語していた人でも、50歳を超えると“様子見派”に転じる人が少なくない。

書類選考で連敗続きで、面接にさえ進めない。面接でそれまでの実務経験についてさんざん聞かれたのに、最後の一言は「あなたの後輩で誰かいい人いませんか?」……。

いい大学を出て、いい会社に就職し、同期内競争を制して課長レベルまで昇進した、能力主義社会の勝者、いわゆる「メルトクラシーの勝者」ほど、転職のハードルは上がりがちだ。

収入や役職などの社会経済的地位は、職務満足感や人生満足感を高める。しかしその反面、「自分は勝っている、自分には能力がある、自分はこいつらとはちがう」と他者と自分を区別する道具になるマイナス面もある。

実業家握手をするの契約上の高いホテルです
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とりわけ、役職に付随する「権力」におぼれると、その力に執着することで不安から逃れようとする。自分の心をコントロールできない人ほど、他人を支配したがる。権力は強さではなく、弱さに宿るものだ。そういう人たちは決まって、「もちろん、いい話が来たら即行きますけど」と言う。まるで白馬の王子様を待つ夢見る少女のように、根拠なき楽観にすがるのだ。

セカンドキャリアは7掛で

その一方で、転職を決断し、たとえ険しい道のりだろうと新天地に進んでいく人たちがいる。彼らは、決まってすっきりしたいい顔をしている。

「セカンドキャリアは7掛で考えたほうがいいんですよ」「若い人たちが多くて戸惑うことばかりですけど、面白いですよ」と、新しい環境に溶け込む努力をしていた。

見切りをつける人と留まる人を分かつもの。それは健康社会学の分野で言うところの「環境制御力 environmentalmastery」だ。これは「どんな環境でもやっていける確信」のことだ。

高い環境制御力を持つ人は、複雑な状況の中でも機会を有効に活用し、能動的に動くことができる。逆に環境制御力が低いと、はなから「この状況を変えるのは無理」とあきらめているので、自分を生かす機会も目に入らない。